09年に劇場で見た65本(邦画15本)その中からとても楽しめた10本 順不同
ザ・バンク 堕ちた巨像
グッケンハイム美術館にカメラが入ったんだと物珍しく眺めていたら、いきなりの激しい銃撃戦であっという間にギャラリーがズタボロになったのが強烈なインパクト。でネットで全部セットを組んだのだと知り納得。作り手の意気込みが作品を厚くする。それを抜きにしても脚本演出役者全て水準を抜いている。
ウォッチメン
アメリカンなヒーロー像を辛辣に解体しながらも理想主義に含みを残す。素っ裸で青く輝くDrマンハッタンの時代に、ロマンティックな故に哀感ただよってしまうロールシャッハの貧乏ったいハードボイルド振りは泣けた。
007 慰めの報酬
96時間
くもりときどきミートボール3D
集団的自衛権を行使するジャンクフードが空を覆い尽くし、ピザやフライドチキンが襲来する。思いっきりシュールな悪夢。今日性に溢れた素材に父と子の相克という普遍的なテーマで切り込んだドラマは大人にも通用する深みがある。過剰な可愛さで観客に媚びないキャラクターデザインも原色多用のポップな色彩も主張が明確で好感した。ボケたギャグもシャープ。これは意外な秀作なのだった。
グラン・トリノ
「許されざる者」以降の作品は重さも陰気さも半端じゃなくて、面白いが2回見る気にならなかったが、この軽やかさはどうだ。主人公は自動車産業の栄光と共に、つまりはアメリカの栄光そのものを生きたことを誇りとする老人だが、その差別的言辞や苦々しさに歪む表情や独特の笑顔、そして何よりブラフのかけ方において、完璧にハリー・キャラハンであることに感動した。後日、オバマが{GMを救済」との報道に接した折には、老人がアメリカの伝統、文化を象徴する愛車のキーを有色人種の少年に託した場面が見事に重なり、老監督の視線の深さに改めて感じ入ったのだった。
ローハイドからマカロニ・ウエスタンへ転じドン・シーゲルと出会いマルパソカンパ二ーで独立し、ソンドラ・ブロックを経てアカデミー監督となるもB級扱いの偏見の壁は厚かった。そこから先の充実した仕事振りは他に比類がない。最晩年といえる歳に至ってなお、このような瑞々しさに溢れた豊穣な作品を連打するクリント・イーストウッドという名の驚異。
イングロリアス・バスターズ
タランティーノの脳みそは過去に見た映画の記憶とこれから作りたい映像だけで出来上がっているのじゃないか。例えばドレスアップし入念にメークアップするメラニー・ロランをアップで捉えたシーンは「グライド・イン・ブルー」の白バイ警官が鏡の前で装備に見を固めていくシーン思い出させる。他にも至る所に色々な映画の記憶を喚起させるようなシーンが見られる。しかし一番の面白さは、農夫と大佐の会話に何故が緊張感が高まってゆく場面の観客をブラインドサイドにおいた演出の見事さ、かと思えば今度は逆に手の内バラしていつ発火するかとサスペンスを積み上げていく酒場のシーンの緊張と緩和のダイナミズム。ダイアン・クルーガーの足の包帯を心配する素振りから一気に狂気へと振れる大佐の意外性。ナチは悪でアメリカは善というような図式とも無縁に悪いヤツはドッチにもいるというのも説得的。嬉々としてバカをやるブラピがホントに馬鹿に見えた分、クリストフ・ヴァルツがより賢く見えたたものの、最後はきっちりと帳尻を合わせる。もうタランティーノ自由自在なのである。
アバター3D
3D元年と言われるほど普及し始めた今年。3Dで見たのは センター・オブ・ジアース モンスターvsエイリアン ハリーポッター・謎のプリンス ボルト くもりときどきミートボール ファイナル・デッド・サーキット クリスマス・キャロル カールじいさんの空飛ぶ家 アバター の9本。このうちで3D表現と内容とに必然性を感じさせる点においては、「ポーラー・エクスプレス」から「ベオウルフ」といちはやく3Dni取組んできたロバート・ゼメキスが「クリスマス・キャロル」で一日の長の余裕を見せつけた。立体表現といっても刺激としては要するにこっちに来るかこっちから行くかだけというシンプルさだ。だから見せ方には工夫なければ長時間の鑑賞はきつい。その点ロバート・ゼメキスの演出はよく計算されていたて。意外にも平板で面白さに欠けたのは「カールじいさんの空飛ぶ家」。これは内容も底が浅く暴力性が高く救いが無いなどがっかりさせる作品だった。これらの中でアバターはスケールも品質もケタ違いの3D映像で誠に見応えがあった。例えて言えば全編フランク・フラゼッタの絵がフルアニメで動いているような密度と迫力なのだ。ウーン、お話や設定には穴もあるが、とにかく革命的に凄い絵のつるべ打ちだ。
2012
絵の凄さでは2012も負けていない。ローランド・エメリッヒの映画を見たからって何がどうってこともないが、ローランド・エメリッヒがいなかったら、映画界の楽しさはきっと何割か不足してたような気がする。狂気に支えられた仕事のなんと魅力的こと。
this is it
思いがけなくマイケル・ジャクソンの魅力と誇りを持って自分の仕事をする男のカッコ良さをみせて貰った。
次点 スペル、バビロンA.D ベンジャミン・バトン ウォーロード 風が強く吹いている.
日本映画で印象に残ったのは「風が強く吹いている」「南極料理人」「劔岳 点の記」など。
ローマ字やカタカナ表記の時代劇は外人向けの異国情緒やCGに頼った絵作りなど、安っぽさが良く似ていた。
「沈まぬ太陽」はエアラインを舞台に人の生き方を問う内容でありながら、飛行機が飛ぶシーンがチープで嘘くさい。肝心要の絵をおろそかにしているから役者の熱演も空回りするようだった。だから、箱根駅伝のレースシーンを自然なリアルさで見せた「風が強く吹いている」が一層爽やかに見えた。
「笑う警官」は原作を読んでいたし、「ハゲタカ」で魅力的だった大森南朋主演なので見に行ったのだが、角川春樹の脚本演出に唖然とさせられ、途中からは、大家の義太夫を無理やり聞かされる店子のような気分になった。義太夫に比べたらこちらは金を取られた分より悲惨なのだった。
15本だけで言うのはおこがましいが、今や日本映画界は滅びへの道をひた走っているような感じがする。「ディア・ドクター」「空気人形」を見れなかったのは残念だが、見ていたとしてもこの印象は変わらないような気がする。多分