鎌倉三代記
鎌倉時代の出来事として語られる、家康対真田幸村の知略を尽くした攻防は、敵の大将に間違えられ額に入れ墨をほられた偽者が実は本物という「入墨の段」。お局が千姫の奪還に向かう「局使者の段」。病人介護と家事労働にいそしむ千姫の「米洗ひの段」。孝より忠と母の教えは命がけの「三浦之助母別れの段」。父より夫が嫁の道「高綱物語の段」。という具合。
最近寝不足気味なので、電光掲示で字幕も出るし、プログラムは床本つきだが、義太夫聞きながら絶対寝ちゃうなとイヤホンガイドも借りて臨んだ。自分でも過剰防衛と思うが、義太夫には手強い感が強い。しかし、時代物の名作と謳われるだけあり、「入墨の段」のようなややこしいものから「三浦之助母別れの段」泣き落としまで庶民感覚も豊かな分かりやすいお話を、多彩な人形の動きとともに面白く見せてくれる、少しばかり船をこいだが、眠りに落ちる事なく見終えられてよかった。
増補大江山 戻り橋の段
渡辺綱の鬼女退治。高貴で雅な女性の顔が一瞬で恐ろしい般若に変わり、腕に覚えの綱との死闘が繰り広げられる。ヒロイックアクションホラーなファンタジー。スケール大きくダイナミックなクライマックスも楽しい。
第二部
心中宵庚申 上田村の段 八百屋の段 道行思ひの短夜
近松の世話物。嫁が気に入らぬ姑が腹ぼての嫁を追い出しにかかるが、夫は養子で気丈な義母に逆らえず、思いあまって恋女房殺し腹かっ捌いて死出の旅立ち。
これは初心者にも分かる太夫の語りの素晴らしさ。重厚であり軽妙な心理描写と人物の演じ分け。魂を得た人形の品格と優美な物腰。意地悪な姑のキャラの立て方が効果的で、全体の流れを引き締め、シンプルな悲劇に豊な陰影を与えた。太夫が交代した後半、二人が死んで行くさまは、人形とは思えぬというか、人形ならではといいうか分からないが、死を演じている人形の、まるで哀切さが結晶化したかのような迫力と美しさに、客席も粛然となった。
北條秀司 十三回忌追善
狐と笛吹き『今昔物語』より
北條秀司=作
植田紳爾=演出
四世鶴澤清六=作曲
狐と人間の道ならぬ恋路。契ったら死ぬという掟に身悶えするプラトニックな狐と人間という、考えてみれば不思議な話だが、都の四季を背景に、雅な王朝絵巻は美しかった。狐の人形というのも変だが、文楽の狐も可愛い。
5.21
2008/05/22
2007/12/09
「伊賀越道中双六」沼津の段 国立劇場

5日、半日で早退、午後から国立小劇場「社会人のための文楽観賞教室」。
http://www.ntj.jac.go.jp/cgi-bin/pre/performance_img.cgi?img=2171_1.jpg
歌舞伎はその多くを文楽に負うているということで、文楽にも触れてみたいと思ったが、何をどうしていいか判らない。そんな時にぴったりの初心者向けの企画があったもんだ。人形遣いの名人上手が有名だから、文楽は当然人形が主で語りが従だと思っていたから、自ずから興味も関心も人形の動きにあったのだが、幕が開いて太夫四人三味線三人の演者が一声響かせた瞬間、いやいや、語りの迫力にいきなり全身総毛立つ思い。語りが従などとはとんでもない勘違いだったと思い知らされた。ああ、こういうもんですか文楽って。
「寿柱立万歳」(ことぶきはしらだてまんざい)は三河万歳の祝歌。明るく楽しく歌い踊るショートプログラムで観客を文楽の世界へ軽く導入して幕。
ついで解説コーナーは太夫と三味線の代表が登場。下手な漫才師など軽く凌駕する達者な語りと掛け合いで、それぞれの役割をギャグなどかましながら一通り解説し終わると、更に人形遣いへとバトンをつなぐ。人形遣いのチームが人形の仕掛けや遣い方の基本など面白く見せて文楽の基礎講座終了。
まあ、大人向きのギャグで笑わせる場面もあったが、あえて「社会人のための」とことわりを入れるほどの事も無く、そもそも平日の昼間に文楽の勉強しにくる社会人像って、国立劇場はどんな社会人をイメージしてるのだろうか。
締めくくりは「伊賀越道中双六」沼津の段。もとが荒木又右衛門、鍵屋の辻の仇討ちの大評判を受けて劇化されたものだと解説にある。ふーん。そうなんだ。とはいえ、この段に剣豪は登場しない。義理と因果に絡めとられながら、命がけで人としての筋を通そうとする周辺の人物達の悲劇が描かれる。登場するのは実家に戻った傾城と親兄弟。
人形のリアルな動き。元傾城、年寄り、男盛りと幅のあるキャラクターが、それぞれの存在感、生活感も確かな動作、所作で動く様は確かに生きているよう。三人に操られる人形。その頭の脇には首と右手を操る主遣いの顔。人形と人形遣いが雁首そろえているというのは、何と大胆な演出かとも思うのだ。
しかし、義太夫、清元、長唄、小唄、端唄、邦楽の催眠効果抜群で、ましてや襟を正してお勉強しようなんて柄でもない殊勝な心がけは、身に付かない分すぐ化けの皮も剥がれていつの間にか寝入ってしまった。字幕が出るのは大助かりだが、寄る年波には勝てないのである。全然教養がないので歯が立たないということもある。次回はいつになるか判らないが捲土重来を期して体調気力整えておこうかな、おきたいなと思いつつ、次の予定もあり、早めに退散した
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