2008/05/22

文楽五月公演 第一部 第二部

鎌倉三代記 
鎌倉時代の出来事として語られる、家康対真田幸村の知略を尽くした攻防は、敵の大将に間違えられ額に入れ墨をほられた偽者が実は本物という「入墨の段」。お局が千姫の奪還に向かう「局使者の段」。病人介護と家事労働にいそしむ千姫の「米洗ひの段」。孝より忠と母の教えは命がけの「三浦之助母別れの段」。父より夫が嫁の道「高綱物語の段」。という具合。

最近寝不足気味なので、電光掲示で字幕も出るし、プログラムは床本つきだが、義太夫聞きながら絶対寝ちゃうなとイヤホンガイドも借りて臨んだ。自分でも過剰防衛と思うが、義太夫には手強い感が強い。しかし、時代物の名作と謳われるだけあり、「入墨の段」のようなややこしいものから「三浦之助母別れの段」泣き落としまで庶民感覚も豊かな分かりやすいお話を、多彩な人形の動きとともに面白く見せてくれる、少しばかり船をこいだが、眠りに落ちる事なく見終えられてよかった。
 
増補大江山 戻り橋の段
渡辺綱の鬼女退治。高貴で雅な女性の顔が一瞬で恐ろしい般若に変わり、腕に覚えの綱との死闘が繰り広げられる。ヒロイックアクションホラーなファンタジー。スケール大きくダイナミックなクライマックスも楽しい。

第二部

心中宵庚申 上田村の段 八百屋の段 道行思ひの短夜
近松の世話物。嫁が気に入らぬ姑が腹ぼての嫁を追い出しにかかるが、夫は養子で気丈な義母に逆らえず、思いあまって恋女房殺し腹かっ捌いて死出の旅立ち。
 これは初心者にも分かる太夫の語りの素晴らしさ。重厚であり軽妙な心理描写と人物の演じ分け。魂を得た人形の品格と優美な物腰。意地悪な姑のキャラの立て方が効果的で、全体の流れを引き締め、シンプルな悲劇に豊な陰影を与えた。太夫が交代した後半、二人が死んで行くさまは、人形とは思えぬというか、人形ならではといいうか分からないが、死を演じている人形の、まるで哀切さが結晶化したかのような迫力と美しさに、客席も粛然となった。

北條秀司 十三回忌追善
狐と笛吹き『今昔物語』より
北條秀司=作
植田紳爾=演出
四世鶴澤清六=作曲
狐と人間の道ならぬ恋路。契ったら死ぬという掟に身悶えするプラトニックな狐と人間という、考えてみれば不思議な話だが、都の四季を背景に、雅な王朝絵巻は美しかった。狐の人形というのも変だが、文楽の狐も可愛い。
5.21