サブタイトルにあるように「傷だらけの天使・その後」なのである。ショーケンと水谷豊のコンビが一世を風靡した人気TVシリーズ。見ていなかったので詳しいことはしらないが、水谷豊の「アニキー」が流行語になったことは覚えている。しかし、矢作のノベライズには驚いた。ノベライズするほど矢作は「傷だらけの天使」が好きだったというのも凄く意外だ。
お話は、30年前水谷豊が死んで以来、世捨て人同然で生きて来たショーケンが、身に覚えのない事件に巻き込まれ、ホームタウンに舞い戻って30年の空白に戸惑いながら真相を究明するという、「ららら科學の子」のリメイクとも焼き直しとも言った内容。
「ららら科學の子」は全共闘運動中に殺人の罪を疑われて中国に逃亡し、文革後を生き延び30年後に帰国した男の目を通し、平成日本の有り様を検証するという話で、姿を現さない親友や消息不明となった妹など配しながら「さらば愛しき人よ」の巧妙な本歌取りの面白さもあるが、その年の三島由紀夫賞を受賞している真面目な作品。
今回、中国帰りの政治犯から元チンピラのホームレスへと主人公の変化はそのまま内容に直結しているが、適度なユーモアで料理された社会批評の鋭さは変わらない。新宿に戻った初老の不良が大人げなく突っ走る勢いの良さは、何処をとってもエンターテインメントに徹した作り。派手なネット犯罪の扱いなどの今日性など「ららら」では描ききれなかった点かもしれない。因縁深めたキャラ設定といい、完成された世界観の中に遊ぶ事を矢作自身がのびのびと楽しんでいるのは凄く意外だが、結果的にノリの良い楽しい作品になっている。