2005/12/23

悲劇週間


矢作はよく他の作家(監督)の作を下敷きにするが、もろチャンドラーだった前作「ロング・グッドバイ」では、シチュエーションやキャラの不自然さに結構違和感があった。ただ、昭和への惜別の情は理解できたし、何より「ハ」の字への決別も著されていると思えば、不自然さには情状酌量で応じることができた。

昭和の跡目を相続した平成日本のみっともなさは、矢作もかねてから指摘してきたところだが、ますますもって救い難い社会現象頻発する昨今、憂国の作家は維新へと回天したか、

 明治四十五年、僕は二十歳だった。それがいったいどのような歳であったか誰にも語らせまい。

と始まる新作はポール・二ザンを彷彿とさせる。
なるほど。青春。明治。「アデン・アラビア」懐かしの60年代。ハードボイルド文体に日本語のリズム感による一層の磨きがかけられ、スマートで読み易い。うーん「ハ」の字ではないが「ハ」の字以外の何者でもない匂いもぷんぷんしている。