一、猩々(しょうじょう)
酒に目のない猿が孝行者の酒売りの振る舞い酒に上機嫌となって舞い踊る。華麗な装束で大らかに舞う2匹の猿は、シャープで切れのある美しさの染五郎に柔らかさと包容力の梅玉とで好対照。舞台の華やいだ気分が客席くまなく包み込む。そんな楽しさあふれる舞台。
二、一條大蔵譚 (いちじょうおおくらものがたり)
平家の世にあって、源氏の忠臣鬼次郎(梅玉)は一條大蔵卿(吉右衛門)に打倒平家、源氏旗揚げの覚悟を糾そうと館に入り込むが、そこで目にしたのは世評通りの阿呆振り。
吉右衛門最高!何と素晴らしいばか殿様。無邪気と愛嬌はたっぷりだがそこに嫌みのかけらもないし、大技小技を駆使しても構えの大きさには揺らぎも無い。地味な感じが強かった昔が嘘のような、明るく大きな役者ぶりが冴え渡って、福助、吉乃丞、魁春、段四郎の見せ場もバッチリ決まった。昼の部の白眉と言える面白さ。
三、けいせい浜真砂(けいせいはまのまさご)
女五右衛門
1月2日にNHKが劇場中継したので何がどうなるか分かっていたが、派手な色彩の山門がせり上がってくる仕掛けのダイナミズムには胸がときめいた。山門の上で雁がくわえて来た巻文を広げ、親の仇にかんざしを投げつける立女形中村雀右衛門は88歳にしてこれが初役だという。
山門の下でかんざしを受ける吉右衛門がその風格で長寿の名優をあっぱれリスペクトし、この間15分にも満たない長さ。ま、それ故に贅沢きわまりない豪華絢爛の一幕。いやいいもん見せてもらった。
歌舞伎では石川五右衛門とは養父明智光秀の仇として秀吉を討とうとする実は朝鮮人。と知っって、あまりの奇想天外さにぶっとんだことがあったが、その五右衛門さえ平気で女に変えてしまう。歌舞伎ってのはこういうことを当たり前のように平気でしてしまう。無茶苦茶だが痛快でもあるというような、成熟、洗練もここに極まれりというような、何だか不思議な世界がある。細かな校則がびっしり決められているのに、そこの生徒は他のどこよりのびのびと自由を謳歌しているような。
四、新皿屋舗月雨暈 魚屋宗五郎
いろいろな条件が重なって寝てしまった。
五、お祭り
祭礼に沸く町内のトラブルをいなせに処理して行く鳶の頭團十郎。
楽しい踊りだったが、背景画が先月の粟餅と同じようで気になった。
正月の歌舞伎座はいつにも増して着物姿のご婦人が多く、華やかもひとしお。
新年を寿ぐ気分が満ちていた。席は三階だが二列目で悪くないと思いきや、前には背の高い男性とやたら前のめりになる女性で、視界が妨げられること夥しかったのは誤算。紅白もち入り薄皮たいやきは値上げで1枚200円になっていた。1/6