2008/02/04

アメリカン・ギャングスター

ハーレムを牛耳ってきた大物の後釜に納まったフランクは、べトナム戦争のドサクサに米軍絡みの麻薬密輸ルートを確立し、高品質な商品を供給して瞬く間に市場を支配する。組織を血縁で固め、豊富な資金で事業を拡大していくが、堅実な経営手法は麻薬取り締まり官の注意を引くこともない。
一方、伝説の正直者として仲間うちから煙たがられ、それ故に検察の特命麻薬捜査主任を命ぜられたリッチー。麻薬密売の本命をあぶり出そうと懸命の捜査を続けるその線上に無印フランクが浮上してくる。

信義を重んじ、親兄弟を大事にするフランクだが、ブチ切れると何をするかわからない危ない男でもある。粗悪品を売りつけるキューバ・グッディング Jr.に、品質を維持しブランドイメージを守ることが大事なんだと説教を垂れる場面は面白いが、このとんでもない悪党もデンゼル・ワシントンがやるととてもエレガントで少しも悪党に見えない。対するラッセル・クロウは、清廉潔白、お天道様に恥じない生き方を貫く立派な男だが、男やもめの生活感横溢した結構な汚れ役で、キャラクター的にはもっと格好良くてもいいのだが、どうもパッとしない。

一口でいえば、「ゴットファーザー」のロバート・デニーロに対する「アンタッチャブル」のケヴィン・コスナーといった味付けの二人。これを単純な善悪のコントラストで描いていないのはいいが、麻薬を商うフランクの卑劣さを正当化しすぎているきらいがあり、そこからウエットさとか緩さとかが滲み出てくる。更に、悪徳警官撲滅キャンペーンへと盛り上がるところも同様で、どうにも厳しさが足りない。却ってフランクのキャラも見え難くなっている。

ベトナム戦争の推移を背景に、入念に作り込まれた映像も魅力的なアメリカンギャングスター。スケールの大きさで見せるリドリー・スコットにしては中途半端で、ドラマ的な奥行きに乏しい。フランクはデンゼル・ワシントンよりサミュエル・L・ジャクソンなんかの方がしっくりくると思うのだ。

監督:リドリー・スコット
出演:デンゼル・ワシントン、ラッセル・クロウ、キウェテル・イジョフォー、アーマンド・アサンテ、
07年 アメリカ 157分