心臓手術の精鋭チームが立て続けに手術に失敗。心療内科医が内務監査に当たるが不審な点は見当たらない。そこに厚生労働省の役人が調査に乗り込んで院内を引っ掻き回し始めると。という原作はこのミス大賞受賞のベストセラー。話題作の映画化に相応しく新鮮かつ豪華なキャスティング。「人のセックスを笑うな」が同時刻の開始でどっちにするか少し迷ったが、楽しい週末の夜、娯楽に徹したい気分が勝ってこっちにした。
阿部寛が厚生労働省の怪人を生き生きと演じてとっても素晴らしい。キャラクター的にも日本映画には珍しいスケールのいけ好かなさを、嫌みなくユーモアを滲ませながら魅力たっぷりに造形している。「トリック」のバリエーション的なキャラクターとも言えるが、役柄の幅広さと技巧の繊細さにおいて阿部寛はジョニー・デップに匹敵すると思う。
心療内科医を演ずる竹内結子も人の良さと暖かさをじんわりと伝えて魅力的。この主役二人のコンビネーションが小気味良く、心臓手術のハラハラドキドキとよく調和した展開は見応え充分。吉川晃司以下、登場する役者はすべて良いが、特に、出番の長短に関係なくベテランが皆いい演技で楽しませてくれたのが実に印象的、この監督は力があるなぁ。
ミステリーには意外な犯人という様式がある。動機にも方法にも意外性が求められる。一昔前なら、事実は小説より奇なり、と言われる程度の余裕はあったものの、近年は事実のほうが圧倒的に奇想天外で、もはやミステリーもバカミスと呼ばわるぐらいの覚悟があっても太刀打ちは難しくなっているという現実。この映画の犯人はミステリーの様式を満たしているが、動機は、今の時代に驚くようなことでもなく、意外性があるとは言い難い。この程度は月並みと感じるぐらいこちらの感覚は日々のニュースで鍛えられてもいるのだ。この殺伐とした時代に本格ミステリを成立させることの困難さは高まるばかり。フーダニットは納得だが、ハウとホワイに感じる不満を補って余りある、肥大した心臓の余分を切り取ってダウンサイズするバチスタ手術の克明な描写の啓蒙的な面白さだった。
監]中村義洋
[原]海堂尊
[脚]斉藤ひろし 蒔田光治
[音]佐藤直紀
[出]竹内結子 阿部寛 吉川晃司 池内博之 玉山鉄二 井川遥 田口浩正 田中直樹 佐野史郎 野際陽子
2008東宝
120分