
空から雨のようにハンバーガーやホットケーキが降ってくる予告編には食指が動かなかったが、3Dとなればこれは抑えたいと思い、いつものシネコン、今年から3D映画が観れられるようになった「平塚シネプレックス8」に出かけた。
「キャプテンEO」から「ターミネーター」と3Dといえば長い間テーマパーク専用のイベントムービーの観があったが、ここに来て映画のデジタル化をきっかけに一挙に普及し始めた。昔の赤青メガネ時代を思えば今の3Dは明度も彩度も別次元の美しさ。見やすく鮮やかな画面に抜けの良い立体感は奥行きが深く、抜群の飛び出し効果も楽しめる。
センター・オブ・ジ・アース、モンスターとエイリアン、ボルト、それにIMAXの「ハリポタ3D」と観てきた印象から言えば、デジタルアニメは始めから空間設計が行き届くためか画面も良く整理され、時に、無駄の無い画面がのっぺりとした感じになることもあるが、立体感には優れているしとても見易い。しかし、立体感の刺激など見慣れてしまえばすぐ飽きられる。観客が集中力を映画1本分の時間維持するためには、魅力あるキャラクターと胸に迫るストーリーが用意されなければならない。その点でも「モンスターとエイリアン」「ボルト」の2作はどちらも洗練された技術で目一杯の面白さを追求した素晴らしい作品だった。当然今回も期待したいところだが、ピクサーでもなけりゃドリームワークスでもない。予告編からもあまり面白そうな感じが伝わってこなかった「くもりときどきミートボール」。
上映スケジュールも1日2回それも午前中だけ。興行側も全然期待していないのが良くわかる。そもそも、午前中から映画館に出かけるなんざ真っ当な大人のすることじゃない。ましてや平日の昼前からメガネをかけて3Dアニメを見る大人が何人もいるなんてことはハナっから思っていないが、それでもどれぐらいいるかと館内の照明が落ちる時に振り向いたら誰もいない。わを! さらに本編が始まって最初に映ったのが a film by a lot of people の1行。ハァー。
イワシ漁が地場産業の大西洋上の小島。「オイル・サーディン」の生産で栄華を極めたのも今は昔。イワシ缶の売れ行きが落ちて島はデトロイトのように寂れる一方。しかもイワシしか穫れないので島民はイワシしか食べる物がない。そんな現状をよそに、やることなすことなぜか周囲に迷惑がられてしまう発明家フリントが水を食べ物に変える革命的マシンを完成させる。しかし過大なパワーを得たマシンは空の彼方に飛び去ってしまうのだが、やがて曇り空からハンバーガーが降ってくる。フリントは一躍街の人気者となり島は奇跡の復活を遂げる。しかし、人々の要求はマシンの暴走を引き起こし空からの福音は厄災へと転じていく。
荒唐無稽、奇想天外を極めたような話だが、状況設定には現代の我々が直面した社会、経済、環境など問題などが巧みに取り込まれている。各キャラクターには暖かい血が通い、彼らが綾なすドラマは誰にも身に憶えのある関係や心情に支えられて共感度が高い。父との関係もぎこちない主人公はごく普通の青年だし、ヒーローとしてはめげないへこたれないポジティブさ以外の資質に恵まれている訳ではない。父子関係を軸にしたドラマの切なさも、それを笑いで中和させるさじ加減の良さによってより一層身に染みてくる。とある人物がつぶやく「大好きだよ」の一言には朝っぱらから3Dメガネをかけたオヤジの心がフルフルと震えてしまう。なんてこった。なのだ
そんな主人公たちと暴走マシンの攻防が派手なSFアクションとして展開する。人間が過度なシステム依存によって招来した危機というのは60年代から繰り返し描かれてきたテーマだが、これからも何度となく取り上げられることだろう。今回はロバート・ワイズの「スタート・レック」や「インディペンデンス・デイ」のパロディーともリスペクトとも言える「マシン」に、ファーストフードの脅威が組み込まれたりするなど、全編に渡って笑わせ方は気が利いているし伏線の回収は心憎いばかり。
スリル、サスペンス、ユーモアたっぷり。スパイシーだが決して斜に構えてはいない。ビューティフルでウエルメードなハートウォーミング作品なのである。フルフル。
原題:Cloudy with A Chance of Meatballs
監督・脚本:クリス・ミラー、フィル・ロード
2009年 アメリカ :1時間21分





