2009/09/25

しんぼる


男が目覚めると、そこは真っ白な密室。壁には子供のちんちんの形をした突起物が無数にある。それに触れたとたん、ささやかな歓喜の声とともに壁から物が飛び出してくる。ひと触れに一つ、触れればその数だけ新たな物が表れ、ドンキホーテの店内のようになっていく部屋の中、やがて男は懸命の脱出を試みる。
一方、メキシコのとある田舎町では盛りの過ぎた覆面レスラーのエスカルゴマンとその家族が今後の経済的不安という厳しい問題に直面していた。という「シンボル」

密室とメキシコの話が何の脈絡も無いまま平行していく前半は辛抱キツい展開。松本人志は密室から脱出するために様々な手だてを講じるものの上手く行かない男を演じている。ナンセンスさに笑えるギャグもあるが、全体に小粒でテンポの悪さもあり、くすぐりといった程度で、言葉を封印しているのに松本のトークの面白さを越えることが無いのは喜劇映画としてどうなの、と思わせた。ところが、密室とエスカルゴマンがクロスしてからの展開から、これは松本人志の宗教観というか、神観を描いて喜劇的な場面はあるが決して喜劇映画としてジャンル分けされるようなものではないことが見えてくる。

神がいるのか、いないのか、それは分からないが、いるとすれば世界と神との関係はこんなことではないか。という松本の概念を、キリスト教的なシンボルを随所にちりばめながらシニカルに映像化したといえる「しんぼる」は、その毒も含めてほとんどプライベートフィルムと言うべき内容だから、幸福の科学のエル・カンターレほどの動員は見込めず、興行的には難しいだろうし、内容的にも評価され難いだろうが、アマチュアリズムを感じさせながらも、キューブリック並に大胆で刺激的な野心作ではある。

松本自身、eiga.comのインタビューに「本当はメル・ギブソンあたりに出てもらえればと思うんですけど(笑)」
http://eiga.com/movie/54524/special
と応えているが、このメル・ギブソンの名前は当然「パッション」を意識してのはずで、「パッション」のメル・ギブソンが、あの後目覚めたら、そこは壁にちんちんの形をした突起物が無数にある真っ白な密室だった。とすれば一層わかりやすい。

監督:松本人志
プロデューサー:岡本昭彦
脚本:松本人志、高須光聖
音楽:清水靖晃
2009年 上映時間:1時間33分