
幼くして孤児となったジェーン・エアは逆境を乗り越え聡明な女性へと成長し愛を貫く。
ステージ上に観客席を仮設した舞台は、後方に葉の落ちた木が1本立っているだけの極めてシンプルな作り。そこを街角に、荒野に、宏壮なカントリーハウスにと多様な空間に変化させる照明のニュアンスに富んだ色彩が美しい。大道具の自在な出し入れで屋敷内の空間が瞬時に作り出される快感など、洗練された演出のテクニックから繰り出されるビジュアルの充実が印象的。
旋律の美しい曲に松たか子の伸びやかな歌声が乗ってジェーンのキャラクターもクッキリと浮かび上がる。子供の頃のジェーンを始め、登場する子役達が皆達者なのにも驚いた。
がしかし、「ジェーン・エア」って「レベッカ」に似てたような感じと思っていたが、こんな平板な話だったっけ。エピソードには葛藤も苦悩も謎もあるのだが、物語の説明に終始するだけでドラマとしては盛り上がって行かない。うーん、出演者達はそれぞれが良くやっていてアンサンブルとしても魅力的なのに、脚本がハーレクインよりさらに甘いばかりのメロドラマなのである。
大甘のメロドラマのどこが悪いかって、別に悪いところなんかありゃしないのである。良くできたステージであるにもかかわらず、問題はそれを面白く感じないこちらの感覚なので、場違いなところに身を置いてしまった見識の無さや己の不明を恥じるのである。
9.19 12:00 日生劇場 2F F-11
出演:松 たか子 橋本さとし 幸田 浩子 寿 ひずる 旺 なつき
原作=シャーロット・ブロンテ
脚本・作詞・演出=ジョン・ケアード
作曲・作詞=ポール・ゴードン
翻訳:吉田美枝/訳詞:松田直行/音楽監督:山口也
編曲=ブラッド・ハーク、ラリー・ホックマン、スティーブ・タイラー
美術:松井るみ/照明:中川隆一/衣裳:前田文子 音響:湯浅典幸/
ヘアメイク:河村陽子/舞台監督:鈴木政憲 ほか