
「非人ゆえに忍者となり、忍者ゆえに抜忍となったカムイが、求める自由を手にする日は来るか」というナレーションから始まるカムイ外伝。
封建社会の階級制度の最下層に位置づけられた男の過酷な戦いを描いて60年代に大ヒットした社会派漫画をいま映画化するのは、格差社会と言われる昨今の社会状況に対するなにがしかの問題意識に依るものかと思わせるに足る山崎努の語り口。
それを受けるように、カムイは追手との暗闘に明け暮れ、領主佐藤浩市の狂気に振り回されるに側近達の無能振りなど描かれて行くのだが、だからといって特に社会派的なテーマ性が浮かび上がるわけでは無い。それから先は山から海へと舞台を移しながら、終始一貫理屈抜きの娯楽アクションに徹した作りになっている。
ワイアーアクションは変幻自在なニンジャにピッタリだし、昨今の時代劇ブームもCG抜きには考えられないわけだが、カムイ外伝はCGの使い方が日本映画にしてはちょっと変わっていて、荒れ狂う大波に翻弄される舟など、普通は見ることができないものを描く定番表現に加えて、穏やかで真っ青な海を行く舟という何でもない光景をはじめほとんどの海洋シーンにCGを用いている。これらのシーンは南洋の空気感あふれる気持ちさを醸し出してはいるのだが、やってもいないことをたっぷり見せているだけに粗も目立つのが痛し痒し。
さらに、CGによる派手な見せ場の隅々から、CGが可能にした表現が思い切り使え嬉しくてたまらん感と行った気配が伝わってくる。それも始めのうちはご愛嬌だが、多用しすぎには演出の志の低さが漂い出すというデメリットも。しかもクライマックスに向けて「ウオーター・ワールド」のケビン・コスナーとデニス・ホッパーの劣化コピーかと思わせる激闘の展開などもあり、終わってみればこれのどこがカムイ外伝なのか、なんでカムイ外伝なのかも良くわからないという、実にどうも、一体何を見せたかったのかがイマイチ中途半端で、いろいろ後味の悪さも残った。
カムイ外伝だからといって、白土三平原作的なテーマ性が必要ってことはないし徹底的な娯楽アクションで全然かまわない。要は面白いかどうかだが、絵づくりは脇に置くとして、宮藤官九郎にしては、随分細部に綻びが目立つ脚本なのである。脚本には崔洋一の名前もクレジットされているので、クドカンとも思えぬ整合の悪さや詰めの甘さの原因はおそらくその辺にかと思わず想像を逞しくした。
9.20
監督:崔洋一 製作:松本輝起 原作:白土三平
脚本:宮藤官九郎、崔洋一 撮影:江崎朋生、藤澤順一
美術:今村力 音楽:岩代太郎
出演:松山ケンイチ、小雪、大後寿々花、金井勇太、土屋アンナ、PANTA、芦名星、佐藤浩市、イーキン・チェン、伊藤英明、小林薫
2009年:2時間