2006/08/20

表現したい人のためのマンガ入門

変な名前ってことでは、例えば吉田戦車や吉本ばなななど、結構なインパクトがあった。しりあがり寿http://www.saruhage.com/ってのも相当変だが、末広がりの言い換えには芸があるし、寿には社会性豊かな常識人の気配が漂う。意味不明な戦車やばななの暴力性に比べ、「しりあがり寿」には良識というか、理知と含羞もほの見える。

この、へたうま派の巨匠がガイドする「マンガ入門」は、若くして漫画家を志して以来、しりあがり寿がどのように生まれ、何を考えどのように漫画を書き続けてきたか、自作の解題を通して語られるその軌跡が、昭和から平成へと変化していく世相とともに、若さから成熟へと真っ当な変化を遂げる作者を確かな輪郭で浮かび上がらせる。それがとても気持ちよく、これがまた格好いい。

「表現したい人のためのマンガ入門」とはいうが、マンガを描くためのHow to本としての効能を期待したら裏切られるだろう。言ってみればマンガを通して物事の普遍的なHow toに迫った野心作。タイトルから言えばむしろ「表現したい人のため」の部分にこの本の眼目がある。表現したい人の、とはつまり、全ての人に向けてという意味だろう。なんと大それた、でもそれだけの面白さはある。

講談社現代新書