2006/01/15

THE 有頂天ホテル


土曜日の午後。地元シネコンの一番大きいスクリーン、初日2回目の上映に観客七分から八の分の入り。この出足のよさ。こりゃ大ヒットではありませんか。三谷幸喜人気、中高年層からの支持率が高いのも特徴的。年末から「古畑ファイナル」への期待値を高め、年始は3夜連続の高視聴率で盛り上げ、その勢いにのせて大公開の「THE 有頂天ホテル」。フジは計算通りのヒットに笑いが止まらないだろうが、観客を笑いが止まらない状態にさせてくれるかどうかってことで。

新年のカウントダウンを2時間後に控えた老舗ホテル。滞在客の数だけあるのがトラブルの種。まだ芽のうちに摘み取ればよろしいが、花や実にしてはホテルの恥。ホテルの誇りと名誉にかけてお客様を守り抜くのがホテルマンの心意気。という次第で、次から次へと発生する珍問奇問無理難題をあらゆる手段で乗り越えようとする人々を豪華キャストで描いたグランド・ホテル型コメディ。

数多い登場人物が描く複雑な相関図と多彩なエピソード。言ってみれば2時間にワンクールのTVシリーズのゲストとエピソードを丸ごと全部詰め込んだような内容を、よく整理した脚本と淀みない演出で巧みに捌いている。タイムリミットが4時間程度の設定ならともかく、2時間の出来事とするのは苦しいとは思うが、すっきり判り易く楽しませてくれるのは素晴らしい。

三谷好みの役者を自由自在にキャスティング、それぞれの個性と持ち味を生かした見せ場をきっちり用意し、ストーリーの流れにも無理無く乗せている。目配り気配りの行き届いた、おしゃれで品のある脚本だ。起用された役者さんもさぞ嬉しかろうと容易に想像がつく。

川平慈英のウエイターやアリキリのホテル探偵など、小粋なシチュエーションコメディーとしてアメリカンテイストが求められるところなのだが、意外にダサくてシティー感覚が備わらないという難点もあるし、アヒルの使い方も成功しているとは言い難いが、芸達者な豪華出演者の個人技はたっぷり楽しめる。中でも素晴らしいのが篠原涼子とYOUの二人。いや、篠原涼子は本当巧いし魅力的。最後に場面をさらうYOUの存在感はテレビより映画に向いている。

つらくてもしんどくても夢と希望と残り時間がある限り、諦めないでやり抜こうか。って感じの前向きなメッセージも正月気分にフィットして、気分一新のリセット感と共に出口に向かえる優良作品。

「みんなの家」の夫婦が灰皿で食事をして花を添えたり、近藤と芹沢が抱き合ったりの三谷ならではの遊び、ファンサービスも楽しめる。


監督・脚本:三谷幸喜
撮影:山本英夫
音楽:本間勇輔
出演:役所広司、松たか子、香取慎吾、佐藤浩市、唐沢寿明、西田敏行ら。
2006年日本映画/2時間10分
配給:東宝