2006/01/09

LAハードボイルド


著者:海野弘
発行:平成11年11月20日 第1刷
価格:2381円+税
グリーンアロー出版社
著者は美術から映画、音楽、都市論、小説まで守備範囲の広さで知られる評論家らしい。この本はカリフォルニアオデッセイと名付けられた、全6冊からなる(アメリカを読み直す)叢書の1冊目。サブタイトルに世紀末都市ロサンゼルスとあり、二十世紀の終末を示す最も現代的な都市LAの歴史を解き明かすことで未来の都市像を考察する。という意図のもとに、ハードボイルド小説からLAの闇を読み解いた本、ということになる。

中身は全3章仕立てで、1章 チャンドラーのロサンゼルス で1939年(大いなる眠り)から1958年(プレイバック)までを、2章 ロス・マクのロサンゼルス で1949年(動く標的)から1973年(眠れる美女)まで、3章 LAノワール では(血まみれの月)から(ホワイト・ジャズ)まで、エルロイが描いた歴史と闇からLAを通観している。

これまで単なる楽しみで読んできた本が、見事な文献研究の成果にまとまっているのを見ると、いろいろなこと考えてしまうが、それは置いといて、本の要約が巧みで昔読んだ時の記憶が甦る。特に、ロス・マクは後期、社会派の色彩を深めてから気持ちが離れたが、「さむけ」の面白さなどしっかり思い出し、改めて読み直し追悼の意を捧げようか、というような気持ちにさせられた。

この中で面白かったのは、「長いお別れ」のテリー・レノックスは、チャンドラーにとってのロサンゼルスそのものでなのあり、「ロング・グッドバイ」とは、もはや昔のようではなくなったLAへの決別の言葉なのだから、最後の「プレイバック」の舞台がLAがでないのは当然なのだという指摘。納得した。チャンドラー自身、晩年はラ・ホヤへ移っている。

とても好くまとまっていて、判り易く読み易い。惜しむらくは、LAの今を書き続けているマイクル・コナリーにスペースが割かれていないこと。ロス・マク以降がエルロイだけではノワール方面にバイアスがかかり過ぎて、バランスの悪さが否めない。