
息子との積年の不仲に悩む父親。伝統芸能の仮面劇を求めて、頼りない通訳を頼りに、中国奥地を旅する寡黙な男。予定も計画も思い通りにならない土地で、立ち止まることはあっても、決して引き返しはしない。忍耐強く、着実に歩を前へと進める健さんなのだ。
様々なシチュエーションと背景を用意して、そこにじっと佇む健さんの姿を絶妙のポジションで配置する。ストーリーもそのために奉仕している。中国の大地に拮抗する健さんの立ち姿。言葉もアクションも表情も無く、立ち尽くす背中から伝わってくる万感の思い。うーん、健さんはいくつになっても健さんなのだ
チャン・イーモウは本当に健さんが好きなのだなぁ。好きが嵩じてプロモーションビデオを作っちゃった。健さんファンが、健さんのために作った熱烈ファンレター。これはそういう映画だ。
チャン・イーモウとして上出来の作品とは決して言えないが、想いの深さはしっかり伝わってくる。
最後に、健さんは少年の目線に合わせてしゃがみ込むのだが、その所作の切れと姿の美しさには痺れた。健さんの全盛を知らない若い人に、70も半ばの俳優の、この美しさは通じるだろうか。
原題:千里走単騎
監督・原案:チャン・イーモウ
日本編監督:降旗康男
脚本:ヅォウ・ジンジー
撮影:ジェオ・シャーディン、木村大作
出演:高倉健、リー・ジャーミン、寺島しのぶ、中井貴一
(2006年日本=中国合作/1時間48分
配給:東宝