2007/03/22

パフューム/ある人殺しの物語

18世紀のパリ。悪臭まみれの都に花開いた香水文化。類い稀な嗅覚を持って生まれ落ちた男の数奇な運命が、究極の香水への扉を開く。

うーん、これは面白い。とにかく絵が優れている。冒頭、猥雑な活力に溢れたパリの市場から絵の厚みが素晴らしい。最近では、ロマン・ポランスキー の「オリバー・ツイスト」が入念なロンドンを再現していたが、このパリのねっとりした密度と奥行きのリアリティーはちょとした見ものだ。

衣装デザインと美術の素晴らしさだけでも、この作品には観るべき価値がある。と言いたいくらい、この作品のビジュアルの魅力に惹き付けられた。グロテスクとは美だという事がよく表現されているのもうれしい。艶のある豊かな画面に 感傷や情緒をきれいさっぱりと排除した語り口の、クールでドライな肌触りも心地よい。 主人公の遍歴の哀しさが思いがけないウネリとなって周囲を変化させるが、全ては本人へと還ってくるというドラマにも、巧妙な伏線がめぐらされ、意表をつく展開で、エンディングの情感を見事に高める憎い作りではある。

ダスティン・ホフマンとダスティン・ホフマンが 登場するシーンの美術が素晴らしい。 アラン・リックマンはあのくぐもった声も大好き なので、文句を言う事も無いのだが、 登場人物たちがフランス語だったら一層よかった。ともあれ、美しさと哀しさを基調に、時に皮肉なユーモアを交えながら、ヤバい話をヤバい絵柄で見せる2時間半、主人公の一生は観る者を感動へと導いてくれる。どんな感動って、こちらに刃を突きつけてくるような、曰く言い難い感動なのだ。

原題:Perfume: The Story of a Murderer
監督:トム・ティクバ
原作:パトリック・ジュースキント
脚本:トム・ティクバ、ベルント・アイヒンガー、アンドリュー・バーキン
撮影:フランク・グリーベ
出演:ベン・ウィショー、ダスティン・ホフマン、アラン・リックマン、レイチェル・ハード=ウッド
2006年ドイツ=フランス=スペイン/2時間27分
配給:ギャガ・コミュニケーションズ