
1月に観た「朧の森に棲む鬼」は、いのうえひでのりの演出が冴え渡った素晴らしいステージだった。 休む間もなくいのうえが3月にTOMMYを演出することを知って、The Whoもケン・ラッセルもリアルタイムだが、アルバムも映画も無縁にきたもので、TOMMYへの思い入れも特には無く、単に、いのうえひでのりの演出観たさでチケットを買う。
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父親の殺人を目撃し、以来感覚を遮断、三重苦となったトミー。外界との接点を閉ざした少年は長じてピンボールゲームの才能を開花させ、天 才的プレーヤーとして世界の頂点に立つ。更に三重苦から解放され、奇跡の教祖として祭り上げられるが挫折。そのどん底に真の解放が訪れる。
いのうえは「メタル・マクベス」のバリエーションとも言える手法の、LEDスクリーンの映像を駆使し、スピーディーな場面転換でグイグイ押し てくる。大掛かりなセットを組んだメタルマクベスでは、あくまで補助的な役割だったスクリーンだったが、今回はセットに変わる背景として全場面を支えている。状況設定も明瞭だし、転換はスピーディーだが、見慣れてしまえば舞台の演出として手抜き感は否め無い。その分、小道具のデザインや使い方はポップで、おもちゃ箱をひっくり返したような勢いはある。
客席はロックと言うよりクラシックのように静かだったが、変態右近やサディストROLLYのパフォーマンス辺りからテンションは上向き、「The Acid Queen」で完全にスイッチが入った。更に「Pinball Wizard」で盛り上がりは最高潮に。名曲には人を動かす力がある。名曲たる所以だ。
ステージ客席が一体となった「Pinball Wizard」で15分の休憩となったが、むしろこのまま突っ走ってほしかった。後半は展開がシリアスでテンションも低めに推移するため、前半の高揚感が後半へと繋がり難いのは当然にしても、TOMMYの内的な成長など説明的に流れるだけで今ひとつ迫ってこない。ま、キャラクテーも記号的だし、情緒的な盛り上がりは狙いの外なのだろう。トミーの両親には両親という記号以上の演技は求められていなかった。というような意味ではステージ全体のアンサンブルはバランスがとれていたと思う。衣装デザインが以外と面白くなかったこと。個人技ではROLLYのヤバい存在感に魅力があった。
THE WHO’S「トミー」
■演出:いのうえひでのり
■出演:中川晃教 / 高岡早紀 / パク・トンハ / ソムン・タク / ROLLY / 右近健一 / 村木よし子 / 斉藤レイ / 他
■訳詞:湯川れい子 / 右近健一■翻訳:薛 珠麗■