スピード・レーサーでスカッと楽しもうかと思ったが予定変更。重い映画は嫌なのだが、時間の都合で仕方ない。日航123便が群馬県に墜落。群馬の地方紙・北関東新聞社の全権デスクに任命された悠木は、混乱を増してゆく状況の中、報道の使命と地方紙の存在意義を賭け、硬派な編集方針を貫こうとするが社内の軟派勢力も黙っていない。
未曾有の航空機事故。新聞報道の現場でどのような葛藤が繰り広げられたか。編集、営業、幹部に遊軍。仕事をする男達が魅力的に活写されてとても面白い。主演の堤真一と堺雅人が良い。更に、脇を固める遠藤憲一、でんでん、蛍雪次朗、堀部圭亮、マギーが実に素晴らしい演技でキャラクターを掘り下げ、ダイナミックな魅力にあふれた群像劇になっている。遠藤憲一と堤真一の怒鳴り合いが素晴らしい迫力だし、堺雅人が堤真一を睨みつける目付きの鋭さも絵になっている。堀部圭亮の敵役ぶりもアクセントとして効果的だし、蛍雪次朗の臭みも申し分ない。男達の顔つき、表情、台詞ひとつ一つが味わい深い。スクープに邁進する女性記者もキャラがしっかり立ち上がった。
日本の俳優は、男は兵隊、女は娼婦をやればみんな上手い、てなことを聞いた事がある。その言葉通り、北関東新聞社の編集会議も帝国陸軍の作戦会議のように、あるいは組事務所のように見えてくるような気配もあるが、善い男も悪い男も「男」がこれだけ格好良く描かれた映画も最近珍しいのではないか。
あか抜けないというよりダサイ、メタリックな英字のメインタイトルがスライドインして来た時には、嫌な予感がしたが、他にはそのような恥ずかしさをもよおす箇所はなく安心した。山崎努の描き方。堤真一のキャラとエンディング。スリリングな展開を抑制する構成、編集のテクなどハリウッド風味な演出も、全体の湿度を下げてドラマに落ち着きと深みを与える技ありの1本。見応えある秀作。
監督:原田眞人
脚本:加藤正人、成島出、原田眞人
製作:若杉正明
原作:横山秀夫
撮影:小林元
音楽:村松崇継
出演:堤真一、堺雅人、小澤征悦、田口トモロヲ、堀部圭亮、マギー、尾野真千子、でんでん、矢島健一、皆川猿時、野波麻帆、西田尚美、遠藤憲一、中村育二、蛍雪次朗、高嶋政宏、山崎努
2008年/2時間25分
配給:東映、ギャガ・コミュニケーションズ