親鸞、道元等、新仏教の台頭に既成勢力の延暦寺は危機感を深めている。道元も苦難を覚悟し、弟子達を戒めているが、近頃どういうわけか婦女暴行の罪で囚われた男の夢ばかり見る。折しも、弟子達が開山記念に奉納する「道元禅師半生記」を前に、悟りを極めた自分と婦女暴行犯の意識の狭間に漂い出る。
劇中劇「道元禅師半生記」がその時代と道元の果たした役割を分かりやすく、面白く提示し、曹洞宗に対する理解が一挙に深まったような気分に。作者の独壇場ともいえる言葉遊び。鋭い風刺が心地よいリズム、快適なテンポで放たれる。役者達が早変わりと体技で何役も演じ分ける様は、簡潔で無駄がない。随所で繰り広げられる歌と踊りも、出演者達の共感度が深くいい感じだ。
阿部寛は立っても座っても品と迫力がある。北村有起哉の明るくスポーティーな道元が楽しい。木場勝己の重々しさが苦手なのだが、今回の軽さは良かった。場面転換は洗練され速度もあって気持ちがよい。前半を締めくくる、船が中国へと向かう場面のイマジネーション豊かな処理が素晴らしい。
そして何より、楽しませ、感化する、井上ひさしの脚本が見事だ。元々は上演するに6、7時間は必要という膨大な、体力気力横溢し、コントロールしきれないぐらいの勢いで若さが爆発した作品だったらしい。初演から37年、今回の改作との違いは分からないが、ちりばめられた伏線が見事に回収され、謎が解けてテーマがくっきりと立ち上がるエキサイティングな作劇。据えっぱなしだった舞台背景の意味に改めて気付かされる快感もうれしかった。この作品をリードしたのが75歳になろうとする作家と演出家だということにも改めて驚かされる。刺激的な舞台。客席に大竹しのぶ。
脚本 井上ひさし
演出 蜷川幸雄
出演 阿部寛 / 栗山千明 / 北村有起哉 / 横山めぐみ / 高橋洋 / 大石継太 / 片岡サチ / 池谷のぶえ / 神保共子 / 木場勝己 他
2008/7/23(水)13:00