2008/07/29

崖の上のポニョ

これは川端康成に於ける「眠れる美女」。谷崎に於ける「鍵」ともいうべき作品。ポテンシャルの低下と残り時間の短さを自覚した年寄りが、自分の好きなことだけをやりたい放題やったプライベートフィルムとしてみれば、理屈もきれいごとも取っ払い、少女フェチに邁進しきった宮崎駿の面目躍如といった面白さがある。ただし、フェチを耽美に止揚できぬまま自爆したような中途半端さはいただけない。

子供向けとしてみても、わがまま通して道理引っ込める子供至上の展開をはじめ、いたいけな子供等に種々間違った価値観を刷り込むだろう場面の多さは気になる。対象年齢は12歳以上が妥当。犠牲の尊さに触れられていないのも底が浅い。もう辛い話は描きたくない気持ちが強いのかもしてないが、おとぎ話、ファンタジーとはいえ、ハッピーエンドにも程がある。

流石に絵は良く動く。イマジネーションに溢れたダイナミックな映像は相変わらず凄みがある。背景画がペイントでなく色鉛筆系のドローイングで描かれているのも、短編では珍しくないが劇場用の長編では新鮮に映る。崖の草などとても美しかった。最後はそうすけが魚になれば作品全体がキリっと引き締まったのに。

監督・脚本・原作:宮崎駿
製作:鈴木敏夫
音楽:久石譲
美術:吉田昇
2008年 1時間41分
配給:東宝