一、夜叉ヶ池(やしゃがいけ)
百合:春猿 白雪姫:笑三郎 晃:段治郎 学円:市川右近黒和尚:猿弥 姥:吉弥
二、高野聖(こうやひじり)
女:玉三郎 宗朝:海老蔵 薬売:市蔵 次郎:尾上右近 親仁:歌 六
昼は海老蔵&玉三郎の義経千本桜が人気沸騰で発売早々チケット完売だったが夜は余裕だ。泉鏡花の2本立てだって充分魅力的だと思うが、同じ役者でも演目によって随分集客に差が出るもんだ。
夜叉ケ池
春猿がちょっとやつれた感じで妖艶。姿形もだが仕上げは声。まるで女声そのもの。のど仏を通過したとは思えぬ声に驚いた。動きの少ない前半は春猿の美しさが見物だが、後半は笑三郎が舞台に命を吹き込んで場を盛上げる。
「恋には我が身の命もいらぬ」
「命のために恋はすてない」
「妬ましいが、羨ましい、おとなしゅうしてあやかろうな」
姫君の泣かせる名台詞
奔放で一途だが素直で優しい白雪姫のきりっとした魅力がメリハリの効いた芝居で立ち上がる。とてもいい。
段治郎は晃の心情に今ひとつ届かない。右近は学円を好演していたがどちらかと言えば、晃の方が適役に見えた。
高野聖
人も通わぬ山奥に迷い込み、煩悩を深め彼岸との境を綱渡りするような状況から辛くも帰還する男の話。この男は潔癖とか清潔とかでは全然ないのだが、僧侶であるからして煩悩深き故に誘惑には一層抗う。この辛抱、我慢なければ怪異も妖艶も滑稽に成り果てる。これは喜劇ではないのだが、海老蔵は血中にアドレナリンが大量分泌するような芝居は得手でも、畏怖、畏敬、不安、焦燥、戦慄などの情動を表現の対象とは意識していないようだ。
川での水浴びを一番の見せ場にもって来たのは良いが、あれはどう見ても混浴の露天風呂。海老蔵のぼんくら振りにつけても、もっと清涼感が欲しかった。それでも海老蔵、玉三郎きれいな役者だ。深山幽谷をどう見せるかに心砕いた装置が楽しめた。
終わってみれば、夜の部は笑三郎のもんだった。
2F1−27 7.28