2008/08/09

ハプニング

「シックス・センス」の大成功を受けて、その後のシャマランは自分のやりたいテーマに拘った仕事を続けている。「アンブレイカブル」「サイン」「ヴィレッジ」「レディー・イン・ザ・ウォーター」と、作家性を反映した独特のクセ球で、ストライクゾーンに入るか否か、どれもきわどいコースを衝いてきた。

演出技術にすぐれ、スリル、サスペンスの醸成も巧みなシャマランの、洗練された語り口に思わず惹き込まれ、この先いったい何処に連れて行かれるものかとワクワクしながらスクリーンをみつめるが、終盤、作品のテーマが浮かび上がるに至って、ワクワクが、何じゃこりゃ感へとスライドしてしまう。「シックスセンス」のサプライズ・エンディングを再び、と期待するほどに裏切られたような気分を抱え込むことになる。新作公開の度にそれが繰り返され、期待された興収も伸びない。最近では制作費も低予算化されてきたように感じる。

しかし、トンデモなテーマをメジャーのテクニックで料理するのがシャマランの本領だ。良質のサスペンスとともに大真面目に訴えてくるトンデモなテーマ。その主張はどちらかと言えばカルトの教祖みたいなこともあるが、言ってることには一理も二理もあり、言い方だって面白い。鮮やかな落ちへの期待は満たされなくても、本当の面白さは「何だこりゃ感」の中にこそあるといった塩梅。商業主義の中で抽象的、観念的なテーマを描いて、興行的にはこれから先も「シックス・センス」のような成功は覚束なかろうが、こういう人が一人ぐらいはいた方がいい。

新作も従来のパターンを踏まえているが、地球に対する人類の罪と罰というスケールの大きいテーマをロードムービーとして展開しているところが新しい。細部の矛盾や見せ場主義のあざとさなど、気になるところも少なくないが、緊張感が一定に維持され、静謐なうちに叙情漂う、雰囲気ある絵作りも流石。画面に侵入してくる禍々しさも緩急の程がいい。


ところで、地球環境に対する問題意識を前提にしていることでは、海からのポニョに対して陸からのハプニングで両方合わせると調度いい。ポニョ性善説とハプニング性悪説という対照的な構図も見えてくる。いずれにせよ明るい未来など見えていないのだ。それを、寝た子を起こすな的配慮で可愛さに逃げたのが宮崎なら、ストレートに提示したのがシャマランてことになる。ポニョ可愛いとかでヒットしてるけど、年寄りの言うこと真に受けちゃ駄目だよ、年寄りは狡猾なんから。

原題:The Happening
監督・脚本:M・ナイト・シャマラン
製作:M・ナイト・シャマラン、サム・マーサー、バリー・メンデル
撮影:タク・フジモト
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
美術:ジェニーン・オッペウォール
出演:マーク・ウォールバーグ、ズーイー・デシャネル、ジョン・レグイザモ、ベティ・バックリー、アシュリン・サンチェス、スペンサー・ブレスリン、ロバート・ベイリー・Jr.
2008年アメリカ
1時間31分