2008/08/02

インクレディブル・ハルク

人体実験による変異で興奮すると超人になってしまうブルース・バナーはブラジルに逃れ、隠遁生活を送っていたが、ついに追手の知るところとなり、特殊部隊に包囲されてしまう。

エドワード・ノートンが隠遁している大スラム街の、不細工な建造物が自己増殖を続けたように山すそから山頂まで隙間無くびっしりと覆い尽くした景観が凄い。ラッセル・クロウの「プルーフ・オブ・ライフ」でも似たような光景が見られたがあれはエクアドルだったし、南米というのは日本人の感覚を遥かに凌駕した世界だとつくづく感じられるが、それはともかく。

アン・リーのハルクに較べ、エドワード・ノートンのハルクは身体的、能力的にはかなりダウンサイジング。アン・リー版が凄すぎたのでダウンサイズといっても超人度に全然不足は無い。エドワード・ノートンは陰影が豊かで大変好ましいハルク振り。どんな時でも、怒りに身を任せたりしないよう、感情をコントロールしようと自ら我慢を強いる。健気というか、まるで唐獅子背負った高倉健さんのようだ。

それどころか、感激の再会を果たした恋人と同衾するのは自然な流れだが、興奮すると緑色の怪物になってしまうと急制動。満足に抱き合うことも出来ないのに笑って我慢する。なんて純情でなんて可哀相なハルク。パワーとエネルギーを制御できないハルク、性的な欲求に捉えられ、それを抑制できずに発作的にいろいろ馬鹿なことをやってしまう男のメタファーだったかと初めて気がついた。

元の体に戻りたいハルクの意向に反し、追手の執拗な攻撃は激しさを増す。戦いがエスカレートし、破壊行為はスケールアップする。しかし派手になるほど何故か面白くない。クライマックスの肉弾相打つ一騎打ちに至っては、どうせCGアニメだしと、覚めた気分になってしまった。とは言えこの作品、一番の魅力は、エドワード・ノートン、ティム・ロス、ウィリアム・ハートと並んだ素晴らしいキャスティングにある。この顔ぶれが醸し出すリアリティーの豊かさ、物語に加わる厚みは申し分ない。特にウィリアム・ハートは格好良さ抜群。こうした重量級の曲者俳優達がアメコミの映画化に挑んだ。その姿だけで、既に充分観るに値する作品になっている。
                                           映画の日 千円
原題:The Incredible Hulk
監督:ルイ・レテリエ
脚本:ザック・ペン
製作総指揮:スタン・リー、デビッド・メイゼル、ジム・バン・ウィック
製作:アビ・アラド、ゲイル・アン・ハード、ケビン・フェイグ
撮影:ピーター・メンシーズ・Jr.
音楽:クレイグ・アームストロング
美術:カーク・M・ペトルッチェリ
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
2008年アメリカ 1時間54分
CAST
エドワード・ノートン、リブ・タイラー、ティム・ロス、ウィリアム・ハート、タイ・バーレル、ティム・ブレイク・ネルソン、