2008/09/17

パコと魔法の絵本

因業なじじいが無垢な少女と出会って生まれ変わる。要約すればそれだけのお話。スクルージのバリエーション。タイトルからして「パコと魔法の絵本」だし、「おくりびと」ならまだしも、忙しい大人を引き寄せる要素は皆無だ。実に残念だ。素晴らしい作品なのに。大人は観に行かないだろうな。でも、ポニョかわいいとか言ってる場合じゃないんだよ。断然パコなのだよ。

優しさなのか、弱さなのか、どこか壊れた入院患者達。啖呵を切るのはスタイル抜群の看護婦さん。号泣する強面の男達。タフでなければジェントルにもなれぬという意見もあるが本当に優しいことが一番強い、という絵本のメッセージは傾聴に値する。

アメコミ風デザインのキャラをコスチュームプレイする役者達の、一見誰とは分からぬメイクとオーバーアクトがキッチュな背景とも良く調和している。それぞれのキャラが明確で、どの役者も思いっきり役を楽しんで魅力的だ。クライマックスは実写とCGアニメをハイテンポなカットバックでつなぐという手間のかかる仕事振りで見せ場は最高に盛り上がり、パコが導く高揚感が安らぎと希望に満ちたエンディングへと美しく豊かに実を結ぶ。

派手派手しく洋風にお洒落っぽい作りだが、尻がむず痒くなるような恥ずかしさとは無縁の堂々たるファンタジー振り。日本でもこんな高水準の作品が出来ちゃったんだなぁ。ディズニーにもティム・バートンにも遜色ないどころか凌駕する勢いに胸をうたれる。下妻、松子、パコと観たことのない世界を拓き続ける中島哲也凄い!。今年度を代表する1作として「おくりびと」を認定したばかりだが、チャレンジングなクリーエータ魂が炸裂したこの作品、本年屈指の最高傑作に決定なのだ。ゲロゲーロ!


監督:中島哲也
脚本:中島哲也、門間宣裕
原作:後藤ひろひと
撮影:阿藤正一、尾澤篤史
音楽:ガブリエル・ロベルト
美術:桑島十和子
出演:役所広司、アヤカ・ウィルソン、妻夫木聡、土屋アンナ、阿部サダヲ、加瀬亮、小池栄子、劇団ひとり、山内圭哉、國村隼、上川隆也
2008年日本映画
1時間45分