2008/11/12

赤めだか 立川談春

今年6月の歌舞伎座、談志・談春の親子会のチケットを取ろうと発売日の夜にアクセスしたが既に完売だった。これを読んで、談春にとって歌舞伎座の意味と重さがどれほどだったか、師匠の体調の悪化に、さぞかし無念な事だったかがズンと伝わって来た。行きたかったな親子会。

高座に上がったまま寝込んでしまったが、お客に暖かく見守られたのが古今亭志ん生なら、客席で客が寝ているのに腹を立ててトラブルになったのが立川談志。好き嫌いは置くとして、どちらのエピソードも面白い。特に談志は、昔から「落語とは人間の業の肯定である」なんてことを大声で言っていながら客の居眠りは肯定できないってあたり、普通の社会人としてはなにだが、芸人としてはありだろう。

師匠の小さんにしてからが、剣道の達人としていつも竹刀に剣道着で練習している姿がトレードマークという人で、例えば「たがや」なんぞは一体どんな心持ちでやるもんかと気になるようなところもあった。そういう変わった系譜に入るにしては、談志に惚れて入門したとは言え、談春という人はとても真っ当で、だから談志の太っ腹と小心さが、負けん気と強がりが交差するユニークなキャラクターが作り出す危うい状況と、そこを苦労して泳ぎ続ける一門の姿が愛情深く活写されて、噺家の修業話や楽屋話を聞く面白さもさることながら、成長小説を読むような感動を味わわせてくれる優れもののエッセイになっている。

立川談四楼の『シャレのち曇り』ランダムハウス講談社を合わせ読めば、落語協会を脱会して立川流を旗揚げした一連の騒動が立体的に見えてきて、面白さは倍増する。

08.4.20 初版
08.6.30 3刷
1333円
扶桑社