2009/01/21

ザ・ムーン

アポロ司令船の窓から見えているのは、月面へと降下して行く着陸船イーグル。月面の無彩色にイーグルの金色が唯一の有彩色として輝いています。荘厳で美しい、と同時に戦慄的な映像です。夜空の月を見ても、あそこに行ってきた人がいるということが嘘のように思えます。しかし今から40年前、人類は確かに月に降り立ったのです。

米ソ対立を背景に、国の威信とを賭けた宇宙開発競争から生まれたアポロ計画。あれから40周年を記念した記録映画ということで、巨大なサターンロケット打ち上時の迫力、荒涼さと静けさをたたえた月面の不思議な美しさをはじめ、NASAから提供されたという秘蔵フィルムの興味深い映像が次々に繰り出されます。60年代の社会状況を示すニュース映像に、当時を振り返った宇宙飛行士達の証言を織り込んで、アポロ計画とはどのように展開したかが淡々と示して、月面着陸が歴史的に位置づけられ評価検証されていきます。

その意味では、画面いっぱいに映し出された、70歳以上になる元宇宙飛行士のじいさん達の、とても人間的魅力に溢れた証言の数々が、この作品の何よりの要だと思えます。人間を月へと送り込んだ驚異的なプロジェクトの成功は、科学的、技術的にも世界に多大な恩恵をもたらしましたが、世界がこの40年間に遂げた変化が、アポロ計画とその結果に新しい光を与える事にもなりました。アポロの恩恵として世界が最も共有するべきは、人類史上初めて月に立った彼らが感じ、思ったこと。月に立った人間がどのような認識に至ったかでは無かろうか、と結論づけてゆきます。それは、漆黒の宇宙に浮かぶ色鮮やかな地球の美しさにおののき感謝するということ。

アポロ計画は結局莫大な資金を喰い尽くし、米の宇宙開発計画はその後縮小を余儀なくされてしまいます。あれから40年、今や誰も月に行く事はかないませんが、想像力を駆使して月に降り立つ手だてを共有の財産としてアポロ計画は我々に残してくれたのです。「ライト・スタッフ」+「アポロ13」+「宇宙からの帰還」これらの作品の面白さもぎっしりと詰まっていました。

原題:In the Shadow of the Moon
監督:デビッド・シントン
製作:ダンカン・コップ、クリストファー・ライリー
提供:ロン・ハワード
撮影:クライブ・ノース
音楽:フィリップ・シェパード
出演:バズ・オルドリン、マイク・コリンズ、アラン・ビーン、ジム・ラベル、エドガー・ミッチェル、デイブ・スコット、ジョン・ヤング、チャーリー・デューク、ハリソン・シュミット、ジーン・サーナン
2007年イギリス 1時間40分
配給:アスミック・エース