
カストロに共鳴した若者がゲリラ戦を指導して革命を成功へと導く。
チェ・ゲバラのこともキューバ革命の事も良く知らないので興味深く観ました。キューバの山中でゲリラたちの日常が、ごく日常的に描かれる前半は地味な展開です。そこに、国連に於ける演説。ジャーナリストのインタビューに応える姿。カストロとの邂逅場面などが、当時のニュース映像を思わせるような粒子の粗いモノクロ映像でカットバックされます。モノクロ映像が裏付けある客観映像なら、カラーのゲバラはソダーバーグの主観に基づく映像であり、二つ併せてゲバラとその時代を浮かび上がらせようとの狙いでしょうか。ただ、地味な展開の上に地味な映像がカットバックされるので、意識の集中がなかなか難しいため、シートにふんぞり返った受動的な態度ではてきめんに眠くなります。さらに、思わず身を乗り出すような事もなくて、少し寝ました。
「おもちゃを持った子供は、必ず2つ3つとより多くのおもちゃを欲しがる。欲望には際限がない。それが人間の本性なのだが、しかし、だからといって国がそれをやったら世界はどうなる」と言うゲバラにインタビューアーは「しかし、あなたも一個の人間ではないか」と返します。これに対し「フィデルも私も、全体のために個の欲望を犠牲にする立場を選択したのだ」とゲバラは答えます。カッコいいですが、喘息の発作に苦しみながら行軍するゲバラという頼りなげな姿もあり、ゲバラの不屈の闘志と行動力を普通に、ヒロイックでなく描いているところに、却ってソダーバーグの熱意と志を感じました。
国連での演説も山場を迎え、革命も本懐を遂げようかとする後半、前線が山中から市街へと拡大すると、それ迄の地味な流れとはうって変わって一気に戦争アクション映画の様相を呈した上に、カタルシスたっぷりに収束していきます。まるで、難攻不落のアカバを背面から奇襲して活路を開いたロレンスのアカバ攻略を思わせるような展開を眺めながら、ソダーバーグのこれは「アラビアのロレンス」だったのかと思いました。そうすると、何故かこの作品の作り方全体が、とてもしっくりと収まってくるような感じもしてきました。
ソダーバーグの「オーシャンシリーズ」は全然楽しめなかったのですが、ベニチオ・デル・トロのゲバラが、普通の中にも特別の感じが漂って、説得力も魅力も充分ありました。このままパート2でも楽しませて欲しいと思います。
原題:Che: Part One
監督・撮影:スティーブン・ソダーバーグ
製作:ローラ・ビックフォード、ベニチオ・デル・トロ
製作総指揮:アルバロ・アウグスティン、アルバロ・ロンゴリア、ベレン・アティエンサ、フレデリック・W・ブロスト、グレゴリー・ジェイコブズ
脚本:ピーター・バックマン
美術:アンチェン・ゴメス
音楽:アルベルト・イグレシアス
出演:ベニチオ・デル・トロ、デミアン・ビチル、サンティアゴ・カブレラ、エルビラ・ミンゲス、カタリーナ・サンディノ・モレノ、ロドリゴ・サントロ、ジュリア・オーモンド
2008年スペイン・フランス・アメリカ合作
上映時間:2時間12分
配給:ギャガ・コミュニケーションズ、日活