二十面相とくれば明智小五郎、そこを二十面相に間違われた男と明智の許嫁に変え、怪人対巨人の激突という王道を外したこの作品。太平洋戦争が無かった1949年頃の日本という設定は、全体主義下での個の復権を描いた「Vフォーヴェンデッタ」を連想させますが、その設定も、サーカス芸人と富豪令嬢の汚名挽回の闘いをロマンティックなアクションコメディーとして彩る以上の働きは持たされていません。まぁ肩のこらないお正月向けとしてはこれが正解でしょう。金城武と仲村トオルの間で、松たかこはオキャンな令嬢を生き生きと魅力的に演じ、コメディー的な面白さは結構盛り上がりました。しかしこの三角関係が図式的なままに終始し、肝心のロマンティック方面の盛り上がりには欠けています。
実力もあり経験も豊富なスタッフによるSFXや派手なアクションもなども売りの一つですが、いずれもハリウッドのヒット作品のおいしいところを無節操に取り込み、詰め込み過ぎている感があり感心しません。これは監督さんの趣味か、ニコラ・テスラの物質伝送装置やK−20のビジュアルなどクリストファー・ノーランの気配が濃すぎるのも気になりました。
しかし最大の違和感は、脚本と演出に表れた二十面相と明智小五郎に対する愛情の無さでしょう。国民的ヒーローとして世代を超えて支持されている二人への敬意を利用し結末の面白さに転じて見せるという手口の、それ自体を悪いとは言いませんが、あの結末はあまりに愛も敬意も芸も身も蓋も無さ過ぎ。二人の男から好意を寄せられ、恋の冒険に身を躍らせるご令嬢の大活躍に、それなりの面白さは認めつつ、しかしこの令嬢が感じるワクドキ感を楽しむには、二十面相と明智への愛と敬意なんてのはむしろ無用かと思わせられる結末の哀しさではありました。
監督・脚本:佐藤嗣麻
子
原作:北村想
撮影:柴崎幸三
音楽:佐藤直紀
美術:上條安里
脚本協力・VFX協力:山崎貴
出演:金城武、松たか子、仲村トオル、國村隼、高島礼子、
2008年日本
2時間17分