村勘太郎が道元を演じるということで、道元禅師の若き日々の苦闘が描かれた作品かと思いましたが、母親と死別した少年時代から説き起こし、宋への留学、教団創設、叡山との対立、永平寺建立、鎌倉幕府への貢献から入滅までを描いた一代記だったのは意外でした。鎌倉時代に生きた高僧の一生を2時間で描くのですから、強引さと説明不足とで分かり難い点は少なくありませんが、全体の流れにはテンポの良さが生まれ、退屈せずに観る事ができました。
中村勘太郎は落着きと品格で道元禅師を実に見事に演じていました。5年前の「新撰組」の頃から較べると、目を見張るような成長振りは素晴らしいと思いました。この道元の側近は皆雰囲気のいい僧侶振りで魅力的でした。紅一点の内田有紀が演じる、世俗にまみれた下賤の女が、道元の人となりと思想を観客に分かりやすく提示する役目を担っているのですが、エピソードが余りに通俗的図式的で説得力に欠けています。内田有紀は悪くないのですが、内田有紀の出番を削ってでも、道元の内面を掘り下げた展開で観たいと感じました。
日本の四季に中村勘太郎の立ち姿が良くマッチした美しい画面、丁寧に作られた作品ですが、ある程度の知識理解のある人を想定した内容、語り口になっていると思います。道元や禅に関しての知識が無いと、道元は始めから終わり迄「選ばれた人」として選良の道を歩み続けたようだし、禅に関しても分かり難く思えました。
初日の夕方、高齢者ばかり良く入った客席は老人ホームのような様相を呈していました。年末年始のTV番組にうんざりしたお年寄りの興味関心に訴える題材、特定の世代を狙い撃って見事に仕留めた企画のセンスを感じました。
監督・脚本:高橋伴明
原作:大谷哲夫
撮影:水口智之
音楽:宇崎竜童、中西長谷雄
美術:丸尾知行
出演:中村勘太郎、内田有紀、藤原竜也、村上淳、勝村政信、西村雅彦、笹野高史
2008年:2時間7分