嘘と刀と奸計で天下取りに邁進する悪党染五郎が見せるとびっきりの悪の華。「マクベス」的設定と「リチャード3世」なキャラクターに酒呑童子を絡ませたストーリーに、いのうえ歌舞伎とうたわれるに相応しい肉付けがたっぷりなされ、いかにも劇団新感染らしい舞台。
戦乱の続く世に、嘘八百でのし上がって行く染五郎の色気。テンションの高さと切れの良さできっちり笑わせる阿部サダヲ。人を喰ったふてぶてしさで 他を圧する古田新太。染五郎に絡む高田聖子の軟弱と秋山菜津子のシリアスの鮮やかなコントラストもいい。激しさと派手さで見せるチャンバラも楽しい。
衣装、美術の素晴らしさは定評のあるところだが、染五郎のキャリアアップに応じて上等になっていく衣装のすてきな事。染五郎がどんどん悪党面にな るメイク。ロングコート風の陣羽織とかメタル鎧とか和装のアレンジや色使いの楽しさ。舞台装置も光と影を効果的に使い、密度と奥行きも十分。場面転換も無 駄無く、花道の使い方も効果的で観客をだれさせる事も皆無。音楽も良かった。
とにかく、休憩時間を含む3時間半、悪は一時栄えてもやがて滅びるという当たり前を、長さ感じさずに面白さと迫力で一気に見せきったのは素晴らしい。商業演劇のメッカでの正月公演に相応しく華麗でハイセンスなステージ。いや、堪能した。
出演
市川 染五郎
阿部 サダヲ
秋山 菜津子
真木 よう子
高田 聖子
粟根 まこと
古田 新太
作 中島かずき
演出 いのうえひでのり