冒頭、ミャンマーの虐殺を記録した映像が凄い。娯楽映画には重すぎる前提。ミャンマーへのガイドを頼む平和主義のボランティア一行に「ゴーホーム」と繰り返すスタローン。沈黙と忍の一字で現実をやり過ごす一人ぼっちのランボーだが、ミャンマーの奥深く一行を送り届けるのだ。しかし、その後消息を絶ったボランティアーの救出に向かう傭兵のガイドとして同行したランボーは、ミャンマー軍のあまりな非道さにとうとう封印を解き放ち、尻尾を巻いて逃げようとする傭兵のリーダーに、「こんなところ居たい奴はいない。だが俺たちの仕事はここにあるんだ」と迫る。なんとかっこいい。これを歯切れの悪いスタローンが言うところがまた憎い。ロッキーと同じだが、勘所の抑えがスタローンは巧い。この朴訥さにノせられてしまうのだ。ジャングルクルーズの船頭から超人的な戦闘マシーンへとお約束の変身もカタルシスが効いている。
こうなりゃあとはアクション全開。繰り広げられるのは殺戮の地獄図。「プライベート・ライアン」がエポックを築いた戦闘シーンのリアルな描写だが、あれ以来これほど迫真的かつ即物的な死の描き方をした戦争作品があったか。従来の戦争映画の発想にはなかった人体損壊の克明な描写。これまでの戦争映画が避けて来た戦闘と破壊の実相を、スタローンはCGを駆使して徹底的に描き出し、これでもかとばかりに観客に叩き付けてくる。ただひたすら、弾丸が人体をどう切り裂き、爆薬にどうちぎれ飛んで行くかを見つめるランボーなのである。ロッキーやランボーの栄光にすがる落日のスタローンかと思っていたのである。そうではなかった。重く、深く、矛盾に満ちたテーマを、地獄の黙示録から故郷への長い道へと続く、一筋縄でいかない刺激的な娯楽映画に仕立て上げたスタローン。その思いの深さと志しに敬意を表さずにはおれないのである。
原題:Rambo
監督・脚本・製作:
シルベスター・スタローン
撮影:グレン・マクファーソン
音楽:ブライアン・タイラー
時間:1時間30分
2008年アメリカ
配給:ギャガ・コミュニケーションズ