中年の優柔不断男と勘違いな恋愛中のつぼみ。つぼみの将来を案じた吾輩は不毛な恋を諦めさせようとするが意は通じない。そこでどうするか。ここで大学のミュー研出身という出自も効いて「話して分からなきゃ歌うしか無い」という、よく分からない論理で説教をミュージカル化!。みんなで演じてつぼみの説得にかかるのである。というのが今日のお話。
こういうナンセンスをサラリと設定してシラーっとしてるのがクドカンの楽しいところだが、更に素晴らしいのは、これを魅力的に演じる人を再発見するセンスの鋭さ。流石だ宮藤官九郎。篠原涼子、小泉今日子に続き、斉藤由貴の隠れた魅力を見事に引き出した。大人計画の池津祥子、猫背椿のパワーは凄いし、他の出演者達ももちろん良いが、その中心にあって、吾輩振りが板についてきた斉藤由貴の魅力が、実にどうも抵抗できないくらい、抜群なのである。
吾輩のナレーションに合わせた顔面の演技が多いのは、正統派の美人女優には喜ばしい状況ではないだろうが、こういうことをきちんと演じる人はとてもチャーミングかつクレバーに見えてくるものなのである。ましてや今回は夏目漱石なのだが、斉藤由貴の無愛想には、明治の文豪に拮抗する知性が感じられて不足も無い。漱石が妻という理不尽に嫌な顔ひとつせず、普通を貫く夫の、普通じゃない大きさを見せるミッチーのさりげなさもナンセンスに奥行きと深みを与えている。
毎日可笑しくて、家族そろって楽しんでいる。クドカンに一家団欒の確かな時間を保証してもらっているような塩梅だ。