ふとしたつまずきがさらに大きなつまずきを呼び、身近な男の裏切りがより大きな裏切りに取って代わる。一生懸命なんだけど何故か未来は拓けない。それでも夢と希望で健気に進む、嫌われ松子の生きる道。
原作は読んでいないが、物語をなぞれば陰々滅々。止めどなく下降して行く破滅型。男運の悪い女性の転落人生。といった流れの、暗さ限りないノワールなフィルムとなって当然。
が、しかし、あの「下妻物語」がデビュー作!の監督は、これをミュージカルコメディーとして料理した。しかもですね、このミュージカルシーンの切れ味、華麗でスマートな演出が素晴らしい。コメディーとしても大ネタ、小ネタ取り揃え、冴えたギャグのテンポも良くて、しっかり笑わせてくれる。
新鮮でツボを押さえたキャスティングも素晴らしい。中谷美紀は魅力全開だし、子役の松子の可愛らしさも出色。男はろくでなしの品評会のようなキャラクター続出だが、武田真治、宮藤官九郎、ゴリ、カンニング武田、劇団ひとり、みんな説得力ある演技と素晴らしい存在感。中でも、こいつデキルと感心したのは谷原章介のボケっぷり。意外なところに顔を出す多彩なゲストを観る楽しさもある。
粋でお洒落で華やかにショーアップされた楽しさと、陰惨で救い様のないお話とがどうして1本の映画として成立してしまうのか。それをいとも巧妙に、高水準高品質な作品として提出できちゃうところに、この監督の天才が如実に現れてる。
タイトルロゴから連想すれば、荒川河畔の夕焼けに染まる松子は、タラの夕日に立つスカーレットにダブって見える。
他からどう見えようと、何をいわれようと、その一生が不幸だったか、幸せだったかなんてことは、結局その人自身が判断すること。ましてや、それが女だったらなおさらに。なんてこと思ったのは、松子=スカーレット・オハラ=女、として描かれているようだったから。
理屈はともかく、中島哲也版「風と共に去りぬ」、隅から隅までチャーミングで、ハイセンス、ハイファッションな傑作でした。
[監][脚]中島哲也
[原]山田宗樹
[撮]阿藤正一
[出]中谷美紀 瑛太 伊勢谷友介 香川照之 市川実日子 黒沢あすか 柄本明 木村カエラ 蒼井そら 柴咲コウ
[配給会社] 2006東宝
[上映時間] 130分・PG-12