2007/04/02

下流志向 内田 樹  

学ばない子どもたち、働かない若者たち、とサブタイトルも刺激的なベストセラー。昔の子供は家の手伝いをして褒めてもらった。今の子供達は金を使えば一人前に扱われ、労せずして快感を得る。昔は家庭内労働が社会参加への第一歩だったわけだが、今の子供達に家事手伝い機会はなく、いきなり一人前の消費者として社会と接するようになり、就学以前に消費者として自己を確立してしまう。

その結果、子供達にとって社会とは等価交換の場となった。彼らは賢い消費者として、商品知識に精通(乃至は振りを)し取引を有利に運ぼうとする。それが、「この勉強が何の役に立つんですか」といった教師への問いかけとして現われる。

等価交換の法則は社会全体を覆い、今や人々は不快感の一早い表明で有利な立場を確保しようとするようになっている。これを名付けて不快貨幣の流通といい、その流通量は増大の一途をたどり、人々はクレーマー化し、子供達は未来を捨て値で売り払っているのが、今の日本の現状だと説く。

学ばない子どもたち、働かない若者たちを大量に生み出している現状を、ではどう乗り越えて行けるものか。5時間に及ぶ講演と質疑応答をまとめたという本書、
「ノイズをシグナルに変換するプロセスが学びのプロセス」
「無知とは時間の中で自分自身もまた変化するということを勘定に入れることができない思考のこと。」などの警句もかっこよく、構造主義と武道を究めた内田先生の明晰にして軽妙な語り口に乗せられスリリングな読書が楽しめる。家族と時間と身体性を回復せよと説くのも納得できる、刺激的で示唆に富む好著。

講談社 2007年2月8日3刷 1400円