2007/04/09

さくらん

花魁の世界を描いた人気マンガを、独創的な写真で瞬く間に表現の最前線に躍り出た蜷川実花が監督。椎名林檎が音楽をつけるという、女性による女性のためのプロジェクトといった話題性も売りだとはいえ、いきなりPEACH JOHNのロゴが映ったのには驚いた。

タイミング的には制作会社のロゴとかメインタイトルがでるところだろうが、この作品はそれくらい女性中心を前面に押し出してる訳だ。客席も若い女性がほとんど、中年のオヤジが一人で観てたら怪しまれること請け合い。しかし、男が一人で観たって、これはなかなか面白い作品なのだ。

蜷川監督、「泣いたら負け、惚れたら負け、勝っても負け」という吉原の、頂点に生きる女たちの地獄極楽を、華麗を極めた意匠で画面の隅々を飾りながら、美しく丁寧に描いていく。

極彩色だが寂寥感のあるキッチュな色使い。暗さの使い方が巧くメリハリの効いた構図。どの場面をとっても映画の絵になっているのも気持よい。大門の上に金魚を泳がせたり、繰り返しインサートされる金魚のイメージショットも不思議な効果を挙げている。椎名林檎の起用も大成功。

女優達もこぞって新人女性監督を盛り上げようとの気概に溢れていたようで、菅野美穂や木村佳乃は、演技を競い合うかのように熱いシーンを演じていて印象的。「下妻物語」のヤンキーっぷりが鮮烈だった土屋アンナ。前作のイメージそのまま、ハスキーな啖呵も耳に心地よく、気っぷの良い花魁を男前に演じて魅力的。画面にすっきりとした緊張感を漲らせていたのが素晴らしい。

もう少しテンポが欲しい部分もあったが、椎名桔平、安藤政信、石橋蓮司など男優の使い方、魅力の引出し方なども含め、新人らしからぬ巧さと安定感で見応え充分。実に面白かった。

監督:蜷川実花
脚本:タナダユキ
原作:安野モヨコ
音楽:椎名林檎
撮影:石坂拓郎
美術:岩城南海子
スタイリスト:伊賀大介
出演:土屋アンナ 椎名桔平 成宮寛貴 木村佳乃 菅野美穂 安藤政信 石橋蓮司 夏木マリ
時間:1時間51分
配給:アスミック・エース