
皇帝ペンギンなら誰でも心の歌を持っている。それは誰からも与えらない。身体の奥から生まれてくるものなのだ。皇帝ペンギン界最高の歌姫から生まれたマンブルなのに、何故か歌うことができない。それどころか、反ペンギン的なパタパタ足(ハッピーフィート)の持ち主だった。パタパタ足でどんなに見事なリズムを刻むことができても、心の歌を歌えぬ限り、まともなペンギンとは認められないのだ。マンブルはペンギン界の価値を紊乱する不吉な異端児として長老の不興を買い、群れから追放される。
映画館で2回観たが2回とも寝てしまい、DVDは発売即購入したけどまだ見ていない程度の「カーズ」好きとしては、「カーズ」を抑えて今年のアカデミー長編アニメ賞をさらった作品なので、なんか虫が好かないがどうも気になって、とにかく正体だけでも見届けようと、アンチな気分で出かけたのだが、ダイナミックな南極の光景をバックに繰り広げられる貴種ペンギンマンブルの流離譚は、パタパタ足の珍なるステップとペンギン達の熱唱が炸裂するミュージカル CGアニメ。なるほど、悪くない。意外にも好感してしまった。
動物アニメは擬人化の巧みさとかわいらしさで見せることが多いが、ハッピーフィートはリアルさでキャラクターデザインしているのが新味だ。尤も、ペンギン自体が既に完成度高く擬人化されたような、愛嬌のあるスタイルと動きを持つキャラクターではあるのだけど。
ペンギンも南極の自然も見事な映像だが、CGというより記録映画そのままのリアルな描写。それも後半明らかになるこの作品のテーマ、メッセージに直結する表現として納得できる。CGとしての絵的な新しさはないが、その分カメラは良く動くし、モッブシーンの迫力や空気感の奥行きなど、スケールの大きい絵造りは魅力的だ。
人間の姿を、あくまでペンギンの視点からだけで描ききっている点も面白い。トイ・ストーリーでもシドという悪ガキの登場はインパクトあったが、ハッピーフィートでは人間そのものが不気味で恐ろしい存在として描かれている。深い。
巻頭とエンディングの、ことさら宇宙を意識した映像に挟まれた家族と仲間の大切さを説く物語。マクロからミクロへ、ミクロからマクロへと繋がった宇宙の、バランスを壊し続ける文明の愚かさをペンギンの立場から描いた、ご家族向けとしては誠に骨っぽい作品といえる。アカデミー賞受賞作にしては、興行的に振るわない原因もこのヤバさ加減にあるな。
ブリタニー・マーフィの声がものすごくキュートでしびれた。
原題:Happy Feet
製作・脚本・監督:ジョージ・ミラー
共同脚本:ジョン・コリー、ジュディ・モリス、ウォーレン・コールマン
音楽:ジョン・パウエル
声の出演:イライジャ・ウッド、ブリタニー・マーフィ、ヒュー・ジャックマン、ニコール・キッドマン、ヒューゴ・ウィービング、ロビン・ウィリアムズ
2006年アメリカ映画/1時間48分
配給:ワーナー・ブラザース映画