2008/03/10

ライラの冒険 黄金の羅針盤

ダストという、シュタイナーのエーテル体を連想させるエネルギーでつながるパラレルワールド。人はそれぞれが動物の姿をした守護精霊とともに平和に暮らしている。こんな感じで始まる豪華キャスティングもうれしい話題作。

月並みを言えば、ファンタジーの主人公には不遇の時間が不可欠。アヒルから白鳥に、灰かぶりからシンデレラに、ハリーだってマグルにいじめられる時間があればこそのカタルシス。しかし、ライラは始めから選ばれし者として差別化され、特別な者として扱われているので化ける花開くという変身のカタルシスは無い。ライラを演じる子はそれに相応しい威厳と気品とで良くやっているのは大したもので、作品に恵まれればもっと魅力的だろう。

しかし、ライラは強さがストレートで観客は感情移入の余地が少ない。その分をカバーする弱さや愛嬌がファンタジー的には欲しかったと思うが、あくまでファンタジーとして見れば、ということであって、単に冒険活劇と思えば何の問題もない。そういえば黄金の羅針盤をライラが使う様子は、機能的にもラプトップのパソコンでグーグル検索しているように見えてしょうがない。

展開はよどみなく、キャラも多彩だ。ライラが難局を乗り越え様々な冒険をする様を次々と見せられるのだが、話が進むほどに白けた気分になる。全然盛り上がらないし面白くならない。脚本も演出もCGもおよそ惹きつけるものが無く、作り手が何を面白いと思って作っているのか一向に伝わってこないのだ。

だったらぐっすり眠るか席を立つかすれば良かっただけのことだが、そうならなかったのはひとえに、低年齢なお子様向けな内容の中、悪のナンバー2を楽しげに演じたニコール・キッドマンの、突出して大人向けな艶やかさの故だ。

原題:The Golden Compass
監督・脚本:クリス・ワイツ
製作総指揮:ボブ・シェイ、マイケル・リン、トビー・エメリッヒ、アイリーン・マイゼル、アンドリュー・ミアノ、ポール・ワイツ
製作:デボラ・フォート、ビル・カラッロ
原作:フィリップ・プルマン
撮影:ヘンリー・ブラハム
音楽:アレクサンドル・デスプラ
美術:デニス・ガスナー
2007年アメリカ・イギリス合作映画/1時間52分