とにかく、口に入るものなら何でもいい、というねずみ一族の中にあって、素材の鮮度と食い合わせにこだわる異端児レミーはやがて調理に目覚め、ついに花の都でレストランの調理人として頂点に立つ。
最強のブランド力を誇るピクサー社の新作。期待に違わず面白い。田舎から花の都に流れ着く前半部はユーモアもスペクタクルも、巧みなストーリーの流れを効果的に盛り上げて素晴らしい。しかし、パリのレストランに住み着いてからの展開は説得力不足で爽快感に欠ける。
レミー一匹だけならまだしも、他のネズミたち、一族郎党ことごとくを人間の食文化に隷属させ、そこに生活改善したネズミ達の幸せも描き込んでいるのがどうにも気色悪い。ネズミのアイデンティティーを無視したネズミのあり方を一方的に押しつけてもネズミは納得しないと思うが、映画だからみんな納得しちゃってるのだ。しかしなぁ、文化的侵略行為をこんなに明るく楽しく肯定的に描いちゃっていいのか。ベトナムから湾岸戦争を経た、これがアメリカなのか?
ここに描かれた人間とネズミの関係は、今も絶えない異文化衝突のメタファーとしても成り立つもんだから、いまどき、よくこの脚本でよく映画にできたなとびっくりなのである。ネズミはネズミであり何のメタファーでもないと言うかも知れんが、だったら尚更ネズミに人間のまねごとなどさせない方がいいのだ。このゴーマンさに後半は全然楽しくならないのだ。
原題:Ratatouille
監督・脚本:ブラッド・バード
製作総指揮:ジョン・ラセター、アンドリュー・スタントン
音楽:マイケル・ジアッキノ
出演:パットン・オズワルト、ルー・ロマーノ、イアン・ホルム、ジャニーン・ガロファロ、ブラッド・ギャレット、ピーター・オトゥール、ピーター・ソーン、ブライアン・デネヒー
2007年アメリカ映画/1時間50分
配給:ディズニー
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