2007/08/26

夕凪の街 桜の国 

実直で健気な麻生久美子と品よく控えめな藤村志保の佇まいが美しい。被爆から13年後の広島、この二人が柔らかに演じる母娘の暮らしぶりが丹念に描かれて、当たり前の暮らしを送れることの幸せが観客にしっかり伝わってくる。幸せになることに対する後ろめたさに苦しみ、被爆とは、誰かに死ねばいいと思われたことであり、生き延びたことは、その悪意に晒され続けていることだという麻生久美子のつぶやきには脳天どやされた気がした。麻生久美子のベスト作品だ。

夕凪の街から桜の国へと転調し、田中麗奈の軽快感に中越典子の情緒が適度に絡んで、テーマの重さをサラッと受け止める後半、前半とのコントラストを生かしながら、前へと踏み出そうとする若々しい意志を浮かび上がらせる。前半の言葉は新鮮だった。言い方には工夫がある。原作が名の知れたマンガとは知らなかった。読んでみよう。

監督・脚本 : 佐々部清
原作:こうの史代
出演: 田中麗奈 麻生久美子 吉沢悠 中越典子  伊崎充則  金井勇太  藤村志保 堺正章

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