
ニューヨーク市警のはみ出し落ちこぼれアル中ブルース・ウイルス刑事、夜勤明けの開放感に浸る間もなく、ちょいとこの 16ブロック先の裁判所まで、チンピラ一人を連れけと命じられ、嫌々ながらもほんの片手間仕事と、チンピラを乗せて発車する。朝の渋滞、軽口を叩き続ける チンピラ、半端な仕事、全てにうんざりしたアル中刑事の倦怠感が謎の襲撃にいきなり破られ、16区画の街路に激烈なサバイバルレースが繰り広げられてい く。
いやー上出来、大満足、素晴らしい。
生きる目的を見失ったアル中と人生の半分を刑務所で過ごしたチンピラの二人組が、NYPDを向こうに回しての敵中突破のクライム・アクションなロードムービー。
この二人が顔を合わせた時に、チンピラが刑事にする質問。
「大嵐の夜、車で通りかかったバス停に人が3人立っていた。親友と祖母と理想の女。車にはあと一人乗せることができる。その時あんただったらどうする」
全身から発散する黄昏感が真に迫ったブルース・ウイルスがいい。
しゃべり続けるチンピラを演じた黒人青年はラッパーだそうだが、道理で声のトーンやしゃべり方に独特な味があり、しゃべりが神経に障るような状況もそうは感じさせない魅力で演じて、これは実にナイスなキャスティング。
朝のマンハッタンという思いっきり日常的な状況に、警官対警官というプロ同士の腕比べ知恵比べをスピーディーに、かつ意外性十分に描いた脚本の巧さ。多彩なバリエーションで繰り広げたガンプレイやカーアクションの演出も流石の職人技。
バス停3人の選択をどうするか、ブルース・ウイルスの憎い答えが二人の道中を気持ちよく締めくくる。
監督のリチャード・ドナーはオーメン、 スーパーマン、グーニーズ、リーサル・ウェポンと長期安定のキャリアだが、1930年生まれの76歳ということになる。実に、娯楽映画の王道を貫く内容と スタイルの素晴らしさ。エネルギーとパワーに溢れ、年齢を感じさせない大いなる仕事振りにも感動した。
原題:16 Blocks
監督:リチャード・ドナー
脚本:リチャード・ウェンク
撮影:グレン・マクファーソン
音楽:クラウス・バデルト
出演:ブルース・ウィリス、モス・デフ、デビッド・モース、
ジェナ・スターン
2006年アメリカ映画/1時間41分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント