
「シックスセンス」の幽霊、「アンブレイカブル」の超人、「サイン」の宇宙人、「ビレッジ」のモンスター。シャマランの作品はすべからく怪異譚だ。それも ゲテモノ系の。ゲテモノベースに家族愛をブレンドしたスリラー仕立て。ピュアでイノセントな存在を保護する結界が破られ、悪意が浸食してくるというパ ターンを、サプライズエンディングで締めくくるのが基本的スタイルといえる。
「レディー・イン・ザ・ウォーター」もこの流れの上にあるが、シャマランは一番の売りであるサプライズエンディングを放棄し、冒頭のナレーション で物語の前提を全て説明するという思い切った作戦に出た。言ってみれば、語り口を倒叙形式に変えて勝負してみました。といったところだろうか。
もっとも、その昔、人類は水の精霊と協調しあい、調和のとれた世界で幸せに暮らしていましたと言われて、納得や共感求められているようなのだが無理だ。そのお話にサプ ライズはあっても、合理的に物語を閉じる力は無い。だが、シャマランは躊躇も遠慮もなく、水の精霊と守護者達の物語を強引に押しつけてくる。そこには疑問 も異論も反論も入り込む余地はないのである。
シャマランが我が子に語り聴かせた自作のおとぎ話がベースになったストーリーなのだそうだが、三つ四つの幼子ならいざ知らず、金を払った観客相手 にそんな話で啓蒙を図ろうとしているのはどうしたこと。一体人のこと何だと思ってんだろうってことなのである。観客をバカにするにも程があるわけだが、本人にはそのような気はさらさらなさそうだ。どちらかといえば、自我を肥大 化させた新興宗教の教祖が、信者に教義を授けているというのがより近い。
監督本人が結界突破し、トンデモ系世界に大きく踏み出してしまったようだ。
今にして思えば、「シックス・センス」という見事な作品が生まれたのは奇跡としか言いようがない。あの作品に顕れていた謙虚さや真摯な思いは、今のシャマランからはもう感じられないのは残念だ。成功によって人がスポイルされるのは、決して珍しくないのだけど。
原題:Lady in the Water
監督・脚本・出演:M・ナイト・シャマラン
撮影:クリストファー・ドイル
音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演:ポール・ジアマッティ、ブライス・ダラス・ハワード、ジェフリー・ライト、メアリー・ベス・ハート
2006年アメリカ映画/1時間50分
配給:ワーナー・ブラザース映画