2005/09/18

ミリオンダラーベイビー

傾 きかけたボクシングジム。長年手塩にかけて育て上げた選手に逃げられたクリント・イーストウッド。ジムを背負って立つまでに成長した弟子と、これから収 穫期を迎えようと思う矢先の出来事。ジムの経営を立て直す思惑も外れ、残ったのは相変わらず勝てないボクサー達と苦しい台所。娘とも絶縁したままの老境が さらに深まる。
 
それもこれも、すべては自分の生き方を貫いてき結果。誰に文句をいう筋合いでもないが、事ここに至って背に腹は代え られぬ。女はコーチしないという節を曲げ、熱心に弟子入りを志願するプアホワイト、ヒラリー・スワンクを受け入れる。イーストウッドの薫陶よろしく、成長 目覚ましいヒラリー・スワンクは頭角を表し、やがてランキングを駆け上がっていく。

快進撃を続けるヒラリー・スワンクのファイトシーンが極上。不幸をバネにランキングを駆け上がっていくヒラリー・スワンクの面構えの魅力。一撃で相手がマットに沈み込む毎に生まれる強烈なカタルシス。
やがて頂点に上り詰めた二人に訪れる真実の時。イーストウッドが光と影のコントラストで描きだすのは、人生の、社会の、貧しさと豊かさ、老いと若さ、強さと弱さ、その他すべて。我々自身が抱える心の中の光と影。
 
場末のボクシングジムに集まるのは、最底辺の境涯から腕一本で這い上がろうとする貧しい若者たち。ジムを守るのはオーナーのクリント・イーストウッドと住み込みの雑用係モーガン・フリーマンの老いぼれ二人。
片目が白濁した元ボクサーのモーガン・フリーマンがつぶやく。「ボクシングは尊厳のスポーツだ。」

道理で、尊厳とは縁のなさそうなキャラクターばかりが集まったわけだ。
あえてそのような所から人間の尊厳の何たるかを描こうとしたイーストウッド。
ストイックなタッチで、力強くシンプルに物語を進め、深さと静けさのうちに描ききってみせたイーストウッドの、あまりに見事な、驚くべきファイティングスピリット。

05.06.60