2007/12/26

国立劇場 12月歌舞伎公演


「それぞれの忠臣蔵」と題して、討ち入る、守る、肩入れする、様々な事情を通してその一日を浮かび上がらせる。

「堀部彌兵衛」
伯父の仇討ちを果たした安兵衛に惚れ込み、懇願の末、養子に迎え入れた堀部彌兵衛。15年後、吉良邸討ち入りの日、一人娘と祝言をあげさせた安兵衛を伴い、彌兵衛は討ち入りへと向かう。
義理だからこそ本物以上に親子らしい。ちぎったからには何があろうと添い遂げる。今の目からば無理とも不条理とも見えるお江戸の価値観、その哀しさ切なさを支える忠の一字と武家の矜持。養子にと安兵衛を口説き落とす壮年時の彌兵衛と、討ち入りを前に老骨にむち打つ彌兵衛。折り目正しいが融通も利忠臣を演じる吉右衛門の温厚実直振りがいいのだなぁ。とても魅力的だ。どれくらい魅力的かというと、吉右衛門が出てない場面が全然面白くないぐらいに魅力的。彌兵衛の妻の吉之丞は好きだ。

「清水一角」
吉良側随一の使い手清水一角。酒乱傾向で集団にも馴染めない。今日も家族の心配をよそに酒浸りで寝込んでしまう。そこに急を告げる太鼓の音。すわ討ち入りと跳ね起きて決戦場へと飛び込んでゆく。
腕が立つ故に鬱屈し、屈折してしまう一角。酒浸りの鬱屈には荒んだような生活感があっても良いが、若さ故の清新さで見せているのはすっきりした染五郎ならでは。立ち回りしながら身支度を整えていく場面は楽しい。ケレン味たっぷりの名場面としては、着付けをもっと鮮やかに処理してくれるといい。

「松浦の太鼓」
吉良邸の隣、松浦の殿様は俳諧仲間の大高源吾が、いつ討ち入りするかと期待を膨らませていた。しかし最近では討ち入りの兆しもなしとすっかり失望を募らせ、奉公にあがっている大高源吾の妹にも辛くあたる毎日だった。そこに山鹿流の陣太鼓が響き渡り太鼓の拍子から討ち入りを知る。討ち入りに加勢をとはやる心で支度をするところに、全てを終えた大高源吾が殿様へと首尾の報告に訪れる。
俳句の宗匠と大高源吾の二人、邂逅する雪の両国橋の美しさと共に良い芝居。
討ち入りを期待して落ち着かない松浦の殿様。子供っぽいというか、我が侭だが気配りもできるお殿様を愛嬌たっぷりに演じる吉右衛門が実に楽しそう。

決意を秘めて誰にも明かさず誤解に耐える大高源吾に、染五郎の清潔感がよく映えた。討ち入り成功し大高源吾の名誉回復がなって、充分なカタルシスが客席を満たす。この先の悲劇は一時棚上げにして、松浦の殿様とこの喜びを共にしようと言う気分に、いつのまにかさせられている。よくできた芝居をさらに輝かせる吉右衛門の、討ち入り当日をこんな楽しく見せて良いのかというくらいに楽しませてくれる芝居ではある。

よく考えられた3本立て、3階3等席でお一人様1500円で観てしまった。これ映画より安い!のである。格安だが大充実の時間が過ごせた。学生の時に知ってれば、絶対外せない価値あるデートコースでしょこれは。

12/23