怪物の蹂躙に人々は暗く沈んでいた6世紀のデンマーク。ベオウルフは死力を尽くして怪物を退治し、勇者の名と共に王国の富と権力を我が物とするが、そこには新たな呪いがセットされ、呪いはやがて王国を脅かす新たな厄災となって勇者の前に立ち現れる。
モーションキャプチャーとCGによる前作「ポーラー・エクスプレス」が余程楽しかったのか、ロバート・ゼメキスは再び同様の手法による映像の可能性を拡大すべく、より難易度の高い表現に挑んでいる。実験精神に溢れる意欲作だ。
エニックスが社運を賭けて大コケしたフルCG映画「ファイナル・ファンタジー」の辛さに比べれば、ベオウルフの人物表現はこなれて観易くはある。しかし、フルCGで実写のような人間を完璧に表現することは、CGを使う人たちにとって究極の技術目標なのだなぁと改めて感じさせる映像ではある。生気のないCGな表情。生き生きとした生命力を感じさせないCGな動き。表情も動きもモーションキャプチャーされて、豪華な出演者も実に勿体ない使われ方なのだ。特にジョン・マルコビッチの顔は巧くない。これラ全ては実写とCGの組み合わせを潔しとしないロバート・ゼメキスのこだわりとして、将来への貴重な技術の蓄積とされることだろう。
ストーリーは面白いのだ。父権の責任と男の業を問うテーマも今日的だし。クリーチャーや風景や空間移動など、人間が絡まないシーンの表現は申し分無いレベルを維持している。後は人間に魂を入れ、瞳に光を宿らせるだけなわけだが、実にこれが至難の業なのだな。困難な表現にチャレンジし、先駆者として受難の道を往くロバート・ゼメキスを支持する。これからも。
原題:Beowulf
監督・製作:ロバート・ゼメキス
脚本:ニール・ゲイマン、ロジャー・エイバリー
製作総指揮:ニール・ゲイマン、ロジャー・エイバリー
撮影:ロバート・プレスリー
音楽:アラン・シルベストリ
出演:レイ・ウィンストン、アンソニー・ホプキンス、ジョン・マルコビッチ、アンジェリーナ・ジョリー、ロビン・ライト・ペン、2007年アメリカ映画/1時間53分
配給:ワーナー・ブラザース映画