FBIポートランド支局のネット犯罪捜査官ジェニファーは、娘の養育のために夜間勤務を専門にし、同居の母親の協力を得ながらキャリアアップを果たしている。今夜も怪しいウェッブサイトの巡回を始めたジェニファーのモニターに、KILL WITH ME? と見慣れぬ文字が浮かび上がる。
ネットで殺人現場をライブ中継し、アクセス数が増すごとに作動する殺人装置で死に至らしめる。残忍で狡知を極めた犯人はサイトの存在を巧妙に隠蔽し、匿名性に保護された好奇心を共犯者にして、捜査陣を嘲笑いながら更なる犯行に及んで行く。
ネット犯罪を扱った作品はいくつかあったが、この作品はこれまでにない鋭い視点での問題提起がなされている。それは犯人の犯行に至る動機や手のこんだ犯行手段にも深く関連させてあって、犯人像には説得力があり今日性も高い。サイトへアクセスすることが人を殺すと分かっても、人はアクセスをやめられないだろうという苦い認識を高品質なエンターテインメントに変えた技ありの脚本だ。
ポートランドという街をちょっと陰鬱な雰囲気に描写したシャープな映像。ジェニファーの日常生活をきめ細かく追いながらキャラクターの魅力がしっかり描けている。序盤からいかにもなムードで流れる音楽が様式美に則っていて文句なしに良い。意気軒昂だが疲れ気味なダイアン・レインのジェニファーがとても魅力的だ。このダイアン・レイン以外あまり見慣れた顔のないキャスティングにはB級感もあるがむしろリアリティーを盛上げる効果の方が高い。それくらい仕上がりがよく、面白さも抜群の秀作。
原題:Untraceable
監督:グレゴリー・ホブリット
脚本:ロバート・フィボレント、マーク・R・ブリンカー、アリソン・バーネット
撮影:アナスタス・ミコス
音楽:クリストファー・ヤング
美術:ポール・イーズ
2008年アメリカ映画/1時間40分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント