自らの野心とキャリアを賭けた新たな軍事行動をめぐり、独占スクープを餌に好意的報道をと迫るトム上院議員と職業的良心の間で揺れるメリル・ストリープ記者。懐疑的、冷笑的な態度を身にまとい始めた学生に自己中心的な価値観を越えた社会参加の価値と意義を説くカリフォルニア大のロバート・レッドフォード教授。上院議員の杜撰な作戦によって、アフガン山中敵陣の真只中に取り残された若い二人の兵士は、教授の反対を押し切って志願した優秀な教え子だった。
ワシントン、カリフォルニア、アフガン。軍事行動開始から集結へ短い時間にそれぞれの場所で交わされた会話から浮かび上がる今日の合衆国の1断面。
反戦とも、反共和党のプロパガンダとしての主張も明確な作品。その意味では大統領予備選の渦中に投入してこそ価値があるというようなものだが、こんなストレートな政治性をも売りにしてまうショウビズ界の、まず日本では考えられないしたたかさに感じいってしまう。
会話主体の動きの少ない内容だが、動的に構成された脚本と安定感ある演出でとてもスリリングに見せてくれる。メリル・ストリープの格調ある演技が断然素晴らしい。「イエシュ ォアノー」と迫りくるトム・クルーズの上院議員がなかなか良くって、かいま見せる俗な表情にも説得力がある。ロバート・レッドフォードの大学教授も理屈っぽくならず、説教臭くなくナチュラルさに好感する。しかしこれ、面白いが昨今の風潮からもヒットする内容じゃないし。
オールドメンにはもはやノーカントリーだと嘆こうが、今時の若者はとお定まりを吐こうが、事態が改善される訳も無い。改善どころかこんなにしちまった責任こそオールドメンなかったら、一体誰にあるんだってことだ。団塊オヤジこそ責任を自覚しなきゃいけないのに、無事にリタイアしてのうのうと暮らして行こうなんてふざけるな。って言われて言葉返せるオヤジがどれだけいるかってことだが。
アフガン山中に残された二人の若者。じりじりと迫ってくる敵兵に全弾ぶち込んでなお挫けないこの二人、明らかにブッチ・キャシディーとサンダンス・キッドへのオマージュと見えるところに、リベラリスト、レッドフォードの怒りと誇りをかいま見るようだ。
原題:Lions for Lambs
監督:ロバート・レッドフォード
脚本:マシュー・マイケル・カーナハン
製作総指揮:トム・クルーズ、ポーラ・ワグナー
製作: ロバート・レッドフォード、マシュー・マイケル・カーナハン、アンドリュー・ハウプトマン、トレイシー・ファルコ
撮影:フィリップ・ルースロ
音楽:マーク・アイシャム
美術:ヤン・ロールフス
製作国: 2007年アメリカ映画
上映時間:1時間32分
配給:20世紀フォックス映画