2006/01/20

ロード・オブ・ドッグタウン


70年代、干ばつによる給水制限が行われた夏のロサンゼルス。高級住宅地のプールも軒並み干上がっていた。そこに目を付け、スケートボードの格好の遊び場としたストリートキッズ。彼らと彼らが創りだした挑戦的なライディングは、やがてスケートボードそのものの在り方を一新するうねりとなって全米に波及する。少年達が押し広げたマーケットに生まれたビッグビジネス。純粋な遊びから生まれた名声と高額な報酬。少年達の行き方が大きく左右されていく。

以前見た、ベニスビーチの小さなサーフショップで結成されたチーム「ゼファー」と、彼らが巻き起こしたスケートボード革命を描いた『DOGTOWN & Z-BOYS』というドキュメント映画。これが滅法面白かった。サーフィン、スケボーに関心はないが、この映画のZ-BOYSのワイルドな軌跡は痛快で切なく、月並みを言えば、青春の輝きと痛みが月並みでない映像で描かれていた。

あれを見ていなかったら、この映画には何の興味も持たなかっただろう。ドッグタウンという響きが気になって、仕事帰りについ見てしまった。まさに、『DOGTOWN & Z-BOYS』がそのまま映画化されていた。スケーボーのパフォーマンスが、音楽の使い方と併せてリズムの良さとダイナミックさで見応えがある。ドラマとしても青春映画の魅力、面白さがぎっしり詰まっている。

チーム「ゼファー」のカリスマを演じるヒースレジャーがとてもいい。若手3人の個性の違いもバランス良く、それぞれの変化成長が明確に演じられて魅力的。シドも重責を良く果たしていた。少年の母親を演じたレベッカ・デ・モーネイの役者根性にも刮目。

当時の社会状況や風俗が細部にわたって再現され、ロングショットの街頭風景にも不自然さが無い。若手俳優ばかりで、一見低予算にも見える作品だが、決してそんな事はない、必要十分な金と熱い想いに裏付けられ、入念に作り込まれた価値ある作品。

2006/01/18

歓びを歌にのせて


世界的な指揮者として頂点に立ちながら、身も心も廃人同様になってしまった男。全てを捨てて田舎へ隠遁するが、高名なマエストロを人は放っておかず、村の教会は聖歌隊の指導を依頼された男は、気の進まぬままに引き受ける。

スポ根ジャンル映画のお約束と言える滑り出し。この先、挫折した主人公が弱小チームを率い、苦難を乗り越え勝利へ導き、自己再生も果たす。という王道の展開かと思えば、基本的にはそうなのだ。このジャンルなら、コメディ、シリアスの如何を問わず、数多くの優れたファミリームービーを送り出して来たアメリカ映画。その水準に届いてるか。いや方向が全然違う。

例えばディズニーなら、勝利とは成功と正しさの証、というシンプルな価値観から生まれる興奮とカタルシスを間違いなく提供してくれる。ところが同様な設定と展開をみせながら、このスウェーデン映画が伝えてくる感触は全く異なっていて、例えば「天使にラブソングを」に見られるような興奮やヒロイズムは陰も形も無い。

特徴的なのは、人が全て等価な存在として描かれていること。もちろん、主人公は細部を描写され、内面も掘り下げられ、中心人物としての機能を果たしているのだが、他の人たちより価値ある存在として描かれてはいない。牧歌的な村人達も、善良さと同時に、無知で傲慢で偽善的で粗野で身勝手な面も併せ持つ、普通の人間として描かれている。指揮者と聖歌隊の人々を淡々と描きながら、人は、老いや若さや貧富や能力などによって差別されない。といったことを自然に伝える映像の力。

夫の暴力におびえる妻。夫の偽善に絶望する牧師の妻。主人公に好意を寄せる若い女性。この映画を支えている3人の女性を見つめる眼差しには、優しさと鋭さが感じられる。そこにはこの監督の人間的なスケールが如実に現れているようで、暴力も傲慢も嘘も、つまりは人を傷つけるだけの愚かな行いと、穏やかに、しかし毅然と示す彼女等の表情が胸に迫ってくるのだ。

音楽映画の体裁であり、音楽的な見せ場はあるが、特に音楽で無くとも成り立つ物語だと思いながら見ていたが、最後の最後になって、音楽でなければならない理由が、音楽であることの必然が明らかになる。お約束通り、訓練を積んだ聖歌隊は、最後にコンクールで勝利を収めるのだが、この勝利が並の勝利ではない。敗者のいない勝利というのは矛盾極まりないが、聖歌隊はこの奇跡を思いがけない形で成立させてしまう。この決着の付け方の鮮やかさには脱帽させられた。イノセントな魂の回帰を示すエピローグも美しい。

何かの犠牲の上に成り立つ勝利など、本当の勝利では無い、と優しく穏やかに言われるような作品。

これは蛇足だが、主人公のダニエルには明らかにキリストのイメージが込められている。そのつもりで思い返すと、主人公の描き方はもちろん、聖書のエピソードや登場人物に符合すると思えるところがいくつもある。

2005年アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品

監督・脚本:ケイ・ポラック
出演:ミカエル・ニュクビスト フリーダ・ハルグレン
   ヘレン・ヒョホルム レナート・ヤーケル
2004年/スウェーデン/132分
配給:エレファント・ピクチャー

2006/01/15

博士の愛した予告

寺尾聡の博士が、痛切極まりない様子で「僕の記憶は80分しか持たない」と深津絵里に訴える予告編には強い不信感が生じた。

原作は始めの方を読んだきり本がどっかいっちゃったので読了してないのだが、そうなのか?博士の愛した数式ってそんな感じなのか?

なんか原作者の精神から相当かけ離れているような印象を受けるんだが、映画化だから原作から解放されるのも当然とは言え、でもさ、何ともベタで底の浅い感じの映像にどん引きさせられた。

性善説的な寺尾聡より、どこか底知れない性悪説的な柄本明あたりの方がいいと思うのだ。

THE 有頂天ホテル


土曜日の午後。地元シネコンの一番大きいスクリーン、初日2回目の上映に観客七分から八の分の入り。この出足のよさ。こりゃ大ヒットではありませんか。三谷幸喜人気、中高年層からの支持率が高いのも特徴的。年末から「古畑ファイナル」への期待値を高め、年始は3夜連続の高視聴率で盛り上げ、その勢いにのせて大公開の「THE 有頂天ホテル」。フジは計算通りのヒットに笑いが止まらないだろうが、観客を笑いが止まらない状態にさせてくれるかどうかってことで。

新年のカウントダウンを2時間後に控えた老舗ホテル。滞在客の数だけあるのがトラブルの種。まだ芽のうちに摘み取ればよろしいが、花や実にしてはホテルの恥。ホテルの誇りと名誉にかけてお客様を守り抜くのがホテルマンの心意気。という次第で、次から次へと発生する珍問奇問無理難題をあらゆる手段で乗り越えようとする人々を豪華キャストで描いたグランド・ホテル型コメディ。

数多い登場人物が描く複雑な相関図と多彩なエピソード。言ってみれば2時間にワンクールのTVシリーズのゲストとエピソードを丸ごと全部詰め込んだような内容を、よく整理した脚本と淀みない演出で巧みに捌いている。タイムリミットが4時間程度の設定ならともかく、2時間の出来事とするのは苦しいとは思うが、すっきり判り易く楽しませてくれるのは素晴らしい。

三谷好みの役者を自由自在にキャスティング、それぞれの個性と持ち味を生かした見せ場をきっちり用意し、ストーリーの流れにも無理無く乗せている。目配り気配りの行き届いた、おしゃれで品のある脚本だ。起用された役者さんもさぞ嬉しかろうと容易に想像がつく。

川平慈英のウエイターやアリキリのホテル探偵など、小粋なシチュエーションコメディーとしてアメリカンテイストが求められるところなのだが、意外にダサくてシティー感覚が備わらないという難点もあるし、アヒルの使い方も成功しているとは言い難いが、芸達者な豪華出演者の個人技はたっぷり楽しめる。中でも素晴らしいのが篠原涼子とYOUの二人。いや、篠原涼子は本当巧いし魅力的。最後に場面をさらうYOUの存在感はテレビより映画に向いている。

つらくてもしんどくても夢と希望と残り時間がある限り、諦めないでやり抜こうか。って感じの前向きなメッセージも正月気分にフィットして、気分一新のリセット感と共に出口に向かえる優良作品。

「みんなの家」の夫婦が灰皿で食事をして花を添えたり、近藤と芹沢が抱き合ったりの三谷ならではの遊び、ファンサービスも楽しめる。


監督・脚本:三谷幸喜
撮影:山本英夫
音楽:本間勇輔
出演:役所広司、松たか子、香取慎吾、佐藤浩市、唐沢寿明、西田敏行ら。
2006年日本映画/2時間10分
配給:東宝

2006/01/09

Mr. & Mrs. スミス


スリリングな出会いがロマンスに転じ、相手の正体を知らずに結婚した殺し屋同士。数年後には退屈な日常から倦怠期に突入したが、ひょんなことから暗殺仕事で鉢合わせ。今度は死力を尽くして殺し合うことになる。

犬も食わない夫婦喧嘩を、ロマンティックでゴージャスな味付けで、大げさなアクションコメディーにして見せるアイディアがドンピシャのキャスティング。あり得ない設定の夫婦を演ずるブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーが実に楽しそう。「ボーン・アイデンティティー」で男を上げたダグ・リーマンの演出も洒落たテンポでそつがない。

倦怠期の夫婦が殺し合いながらお互いを再発見して行くというのは暗示的だが、ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーの殺し合いを見ていると、倦怠期も悪くないな、結構羨ましいななどと思わせる程におされなロマンティックコメディーになっている。やってることはめちゃくちゃだが、本質はどの夫婦も経験のある月並みってことで、スミスという名前も効いている。

原題:Mr. & Mrs. Smith
監督:ダグ・リーマン
脚本:サイモン・キンバーグ
撮影:ボジョン・バゼッリ
音楽:ジョン・パウエル
出演:ブラッド・ピット、アンジェリーナ・ジョリー、ビンス・ボーン
2005年アメリカ映画/1時間58分
配給:東宝東和

LAハードボイルド


著者:海野弘
発行:平成11年11月20日 第1刷
価格:2381円+税
グリーンアロー出版社
著者は美術から映画、音楽、都市論、小説まで守備範囲の広さで知られる評論家らしい。この本はカリフォルニアオデッセイと名付けられた、全6冊からなる(アメリカを読み直す)叢書の1冊目。サブタイトルに世紀末都市ロサンゼルスとあり、二十世紀の終末を示す最も現代的な都市LAの歴史を解き明かすことで未来の都市像を考察する。という意図のもとに、ハードボイルド小説からLAの闇を読み解いた本、ということになる。

中身は全3章仕立てで、1章 チャンドラーのロサンゼルス で1939年(大いなる眠り)から1958年(プレイバック)までを、2章 ロス・マクのロサンゼルス で1949年(動く標的)から1973年(眠れる美女)まで、3章 LAノワール では(血まみれの月)から(ホワイト・ジャズ)まで、エルロイが描いた歴史と闇からLAを通観している。

これまで単なる楽しみで読んできた本が、見事な文献研究の成果にまとまっているのを見ると、いろいろなこと考えてしまうが、それは置いといて、本の要約が巧みで昔読んだ時の記憶が甦る。特に、ロス・マクは後期、社会派の色彩を深めてから気持ちが離れたが、「さむけ」の面白さなどしっかり思い出し、改めて読み直し追悼の意を捧げようか、というような気持ちにさせられた。

この中で面白かったのは、「長いお別れ」のテリー・レノックスは、チャンドラーにとってのロサンゼルスそのものでなのあり、「ロング・グッドバイ」とは、もはや昔のようではなくなったLAへの決別の言葉なのだから、最後の「プレイバック」の舞台がLAがでないのは当然なのだという指摘。納得した。チャンドラー自身、晩年はラ・ホヤへ移っている。

とても好くまとまっていて、判り易く読み易い。惜しむらくは、LAの今を書き続けているマイクル・コナリーにスペースが割かれていないこと。ロス・マク以降がエルロイだけではノワール方面にバイアスがかかり過ぎて、バランスの悪さが否めない。

胸キュンバトン

Q1 胸キュンするポイントは?
 
 「健気」例えば、孤独で不器用な少年が頑張ってるてな感じ。    

Q2.憧れの胸キュンシチュエーションは?

 君がみ胸に抱かれて聞くは夢の舟歌 恋の唄ーー  名曲「蘇州夜曲」の甘さ切なさ美しさ。

Q3.胸キュンしちゃう言葉は?
  
 「願っていたんだ」
  
微妙な段階を迎えて相手の気持ちをはかりかね、互いに逡巡 しつつ、やはり一緒に前へと踏み出そうと決めた男と女。
週末をリゾートで過ごそうと男が誘う。異論は無いが、今日の 明日では予約がむりだと諦めようとする女に男が言う。
「とっくにおれが予約しているよ」
自信たっぷりな男を揶揄するように女が言う
「戻ってくると判っていたんだ。あなたは暇をつぶしながら私 が戻るのを待っていたわけね。眠れない夜も驚きもなしに」
首を横に振りながら男が言う。
「わかっていなかったよ、シ ルヴィア」「願っていたんだ」
 
クーッツ 痺れる。泣ける。
強情で正義至上で向こう見ずでユーモアの欠片もない警官が 漏らしたこの一言。ボッシュ君についていこうと決心した、マイクル・コナリー「ブラック・ハート」最終行の名台詞 
  
Q4.聞くと胸キュンしちゃう曲は?
 
 1「ケルン・コンサート」キース・ジャレット 
その昔、ツーリング途中に立ち寄った地方都市のとある喫 茶店で流れてきた。疲れた体にピアノの音がジワッと沁み てき、心身が静かに満たされたような感じがした。以来落 ち込んだ時も疲れたときも元気なときも何でもないときもよく聞くが、始めの音にはいつも胸がキュンとする。

 2「早春賦」
唄は憶えど時にあらずと声を立てず、という谷の鶯の姿に胸を衝かれる。

 3「春よこい」松任谷由実 
日本の叙情歌の頂点を極めた作品だと思う。編曲も素晴らしい。

Q5 胸キュンする有名人 5人
  
  1.レティシア(冒険者たち) 
ジョアンナ・シムカスですね。この映画はリノ・バンチュラもアランドロンにも胸キュンでした。
  
  2.パトリシア(勝手にしやがれ) 
ジーン・セバーグですね。完璧です。
  
  3.阿修羅像 (興福寺)  
悲哀と怒りの、類い稀な美少女です。 
  
  4.ナジャ(アンドレ・ブルトン)
ブルトンは嫌いだけどこのナジャは別格。 
  
  5.ウディー・ストロード。全然有名じゃないんだけど。

Q7 今まで生きてきて一番の胸キュンは?
    
説明できない。

Q8 「胸きゅん」に仮に呼び名をつけるとしたら?
    
時間よ止まれ

Q9 胸キュンしたときに心でする音は?
    
   ザンパーーノーー!

SAYURI


柳橋も祇園も吉原も一緒くたになったような異空間「はなまち」の売れっ子芸者コン・リーは、ナンバーワン芸者ミッシェル・ヨーと台頭するチャン・ツィイーに激しい対抗意識を燃やしていた。伝統としきたりに生きる女達が、誇りと名誉と実利をかけて繰り広げるサバイバル。

「芸者の思い出」とは一体どんなお話なのかと思ったが、要は少女が「旦那」への一途な愛を貫いて幸せを手にするというシンデレラ物語なのだった。

風格あるミッシェル・ヨー、チャン・ツィイーも少女から大人へと立派な芸者振り。しかし悪役コン・リーが馬鹿な性悪女としてしか描かれないから、女同士の対立はバランスが悪く、ドラマは深まらない。

渡辺謙は儲け役を気持ち良さそうに演じ、役所広司も特徴あるキャラクターだが、両者行動に説得力が無く、魅力的とは言い難い。それやこれやで、役者はよくやっているのに、行動に聡明さが欠けているため、映画全体に頭が悪そうな雰囲気が漂っていたのは残念。

素材的には五社英雄。「臥虎蔵龍」を思い出したのはミッシェル・ヨーとチャン・ツィイーの競演だからではなく、ヨーヨーマのせい。チャン・ツィイーの少女時代を演じた女の子がかわいくて印象的。展開が早く映像も美して、思っていたより楽しめた。

原題:Memoirs of a Geisha
監督:ロブ・マーシャル
脚本:ロビン・スウィコード、ダグ・ライト
撮影:ディオン・ビーブ
出演:チャン・ツィイー、渡辺謙、コン・リー
2005年アメリカ映画/2時間26分
配給:ブエナビスタ、松竹

2006/01/06

古畑任三郎ファイナル 第3夜

キザでおしゃれな「鬼警部ブルガリ三四郎」が活躍する人気ドラマの打ち上げに招かれた古畑任三郎。美人脚本家に寄せる淡い恋心。ついに明かされるか、古畑の知られざる私生活、と言った趣で幕を開けたファイナル。

古畑の最終章に相応しい犯罪は何?。もちろん三谷殺し。犯人は誰?。もちろん三谷自身。なるほど、双子の美人脚本家はそういうことか。古畑がTV製作の裏側を舞台に、松嶋菜々子に姿を変えた三谷幸喜を追いつめる。

スポットライトの輪の中から歩み去る古畑を捉え続けて来たカメラが、今日は古畑と脚本家のラストダンスを愛おしむように写しながら静かに遠ざかる。古畑の姿が小さくなっていく。古畑が去るのではない。我々が彼の世界から退場するのだと気づかせてくれるラストシーンが美しくも切ない。

ハイセンスで心優しい趣向を堪能させてくれた3夜連続のファイナル。新年早々とても豊かな気分にさせてくれてありがとう。

古畑から「鬼警部ブルガリ三四郎」がスピンオフするってのも面白いな。愚息2号に同意を求めたが、脚本家が捕まっちゃったんだからそれは無いだろ。とたしなめられた。そっか。そうだったな。

2006/01/05

古畑任三郎ファイナル 第2夜

エエッ、向島巡査はイチローの異母兄だったんだ。イチローの登場とともに明かされる衝撃の真実。ナンセンスな笑いで一気に作品世界に引きずり込む。つかみの鮮やかさの、何と小気味の良い。

前夜のコメディータッチとは打って変わったシリアス路線。
嘘はつかないフェアな殺人者。俊足で人目をかわし、レーザービームで証拠隠滅を図る。三谷幸喜が手を変え品を変え、イチローならではの完全犯罪を構築する。

野球選手の余技とは思えない演技でこれに応えるイチロー。余人の想像を越えた境地に立つ天才の厳しさを、人気TVシリーズ中の犯人像として生かし、余すところ無く描ききる。

三谷幸喜の遊び心とイチローの冒険心を豊かな実りに結実させた製作陣。まさに大人の魅力堪能させてくれた第2夜だった。
いよいよ今夜はファイナルバトル。

2006/01/04

古畑任三郎ファイナル 第1夜

「新撰組」!を録画に回し「古畑ファイナル」の第1夜を見る。

東京都下の鬼切村、旧家の次男坊藤原竜也が当主となった実兄を殺す。そこに古畑が乗り込んで、というお話。旧家のドロドロ、雪の密室、童歌の見立て殺人と、もろ横溝正史な設定。

ヘラヘラした笑いで狂気をはらんだ犯人を演じる藤原竜也が実に巧い。西村・今泉がうれしい。田村正和も十八番の風格。

横溝物のパロディーとして笑わせる中でも、極めつけは見立て殺人の本歌「あの世節」!を、歌う吉田日出子。あへあへあへあへ、と意味不明な歌詞を、凝ったメイクで繰り返す不気味な老婆に可笑しさ炸裂。

金田一の小ネタ満載の遊び心横溢した中でも、吉田日出子の老婆は岸田今日子に匹敵する素晴らしさ。これ、シリーズを通じて出色の珍場面だろう。

こうした遊びをしっかり仕込んで、古畑対金田一のクライマックスへと盛り上げていく。実に、作り手のやる気と心意気が伝わってくる楽しさ面白さだった。

今夜はイチローだ。