2007/11/25

11月吉例顔見世大歌舞伎 夜の部

三階席の最前列の席が取れた。仕事早退けで今日は観劇。開演間際に隣の席に着いた若い女性、パンパンにつまったバッグとダウンジャケットを手に額の汗を拭いている。北海道から来たらしい。ファンは凄い。

一、宮島のだんまり(みやじまのだんまり)
 暗闇の中、宝物を巡って登場人物たちが相互に探り合う。という設定で見得の応酬を繰り広げる「だんまり」。派手な衣装に隈取りの悪党やら公卿やら傾城やら、多彩なキャラが勢揃いしてゆるゆると動き、一斉に見得を切って構図を決め、またゆるゆると動きだし型を変えて見得を切る。いかにも歌舞伎らしい見た目が全ての華麗さで魅了する。観ているだけでほんとに楽しい。
 浮舟太夫(福助)畠山重忠(錦之助)大江広元(歌昇)平清盛(歌六)

二、仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)九段目 山科閑居
子の幸せを思う母の切なさ、女の意地と男の本懐。九段目ってこういうお話だったのか。動きの少ない前半、気がつくと少しばかり寝入ってしまった。前半で辛抱を強いて後半で一気に解放するのが歌舞伎の手口みたいなので、寝るのも様式の範疇としよう。 芝翫の貫禄と菊之助の可憐。凛々しい染五郎に吉右衛門の風格。幸四郎はやはり苦手なのだ。
 大星由良之助(吉右衛門)お石(魁春)大星力弥(染五郎)
 加古川本蔵(幸四郎)戸無瀬(芝翫)小浪(菊之助)

三、新古演劇十種の内 土蜘(つちぐも)
源頼光の病気見舞いに現れた祈祷師が実は蜘蛛の化け物。妖怪退治の大太刀まわりとなる。菊五郎の舞踊劇。禍々しい隈取りの妖怪が放つ糸の美しさ。
  源頼光(富十郎)平井保昌(左團次)胡蝶(菊之助)榊(芝雀)
  太郎(仁左衛門)次郎(梅玉)藤内(東蔵)智籌、土蜘の精(菊五郎)

四、三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)
   大川端庚申塚の場
おお、コクーン歌舞伎とは異なる空間と演出。本来はこうかと納得。染五郎は良いな。
 お嬢(孝太郎)お坊(染五郎)和尚(松緑)。

昼より夜の方が楽しかった。
 
11月22日(木)

2007/11/24

ミッドナイト・イーグル

雪の北アルプスに墜落した米軍のステルス爆撃機を巡って、自衛隊特殊部隊対半島からの工作員との死闘に自己の再生を賭けたジャーナリストが絡む山岳アクション。
一応、大作というふれこみだが、これがとことん杜撰な脚本を、合理性など全く考慮しない監督が情緒至上で演出していくという、実にどうもべけんやな展開のとんでも作品。
基本設定はともかく、時間、空間の不整合やら、状況のほころびやら、細部の不始末やら、ご都合主義もきりがない。これは果たしてどこまで行くものかと、逆に興味を覚えるほどに最悪。

ハードアクションとして売るより、竹内結子と大沢たかおの熱演からも、むしろセカチュー的な女性向きの恋愛映画とする方が相応しいが、だからといって面白くなる訳もない。自衛隊員の吉田栄作がなかなかよかった。

クワイエットルームにようこそ

神経内科の隔離病棟の中にあって、さらに隔離されたクワイエットルーム。
何故かその部屋で覚醒した内田有紀。どうしてなのか記憶にないが、どうやら睡眠薬の過剰摂取を自殺未遂と疑ぐとられたらしい。こんなことで仕事をしくじってはキャリアが台無し、退院させろと大騒ぎし却って状況を悪くした挙げ句、早期退院を勝ち取るにはここの生活を受け入れるしか無い、と思い定める。 

過食、拒食、自傷、虚言と様々な病棟の住人たちを演ずる女優たちが、それぞれ個性的な役柄を魅力的に演じている。中でも、表現力と存在感で惹きつける蒼井ゆうと、抜群の巧さと凄みで圧倒的な大竹しのぶの怪演から目が離せない。冷徹な看護婦、性別不明の医者、多彩な患者、怪しい人物オンパレードの中で唯一まともに見える内田有紀の清潔感。まともに見える内田有紀の、実はまともではない病理が明らかになる後半、いきなりクライマックスへ上り詰め、隔離病棟の空気を一気に革新する展開も鮮やか。

患者より挙動が怪しい宮藤官九郎のダメ男のキャラ造形にも説得力がある。皮肉さと優しさ。皮肉というのとは違うのだが、慈愛というか、懐の深い面白がり方というか、きちんと優しい雰囲気に満ちている。どちらかと言えば、つかみどころが無い松尾スズキにしては珍しく、つかみどころのはっきりした作品。明るく元気に生きていこう。って気にさせてくれる。

2007/11/20

ボーン・アルティメイタム

ジェイソン・ボーンのアイデンティティー探しも終局に至って何と全米No.1ヒットを記録したという期待の一作。前売りを買いながら初日に見逃し不覚をとった。で、1週遅れの観賞。
いやぁ、孤立無援のボーン君が、張り巡らされた死線を機転と抜群の身体能力で鮮やかに切り開き、ユーラシア大陸狭しと駆け巡る。ハードアクションの徹底的追及といった様相の3作目。
ボーンの洞察と決断をアクションで説き起こすという心憎い脚本を、ポール・グリーングラスのシャープな演出がイマジネーション溢れた映像に変えていく。知的なアクションと意表をつく展開から生まれる面白さと快感に体を預けた。

謎の核心へと肉薄していくボーンは、1作目より超人度が高くなっているし、潜入や脱出に際しての説明は省いているなど、ご都合主義的な面もあって、アクションの質量の凄さに比べ、ハラハラドキドキ感より大船に乗ったような安定感が先に立つ。ドラマ的盛り上がりはどうなの、巨悪を吹き飛ばすカタルシスがもっと欲しい、と言いたいところもあるが、結局、マット・デイモンの引き締まった体躯と苦悩する猿顔にはそんな気分を吹き飛ばす魅力がそなわっちゃったのだ。要するに、かっこいいのだ。それ以上一体何が必要か、それで充分だろってことだ。すごーく面白かったけど、うーん、スプレマシーの方が、好きかな。

原題:The Bourne Ultimatum
監督:ポール・グリーングラス
脚本:トニー・ギルロイ、スコット・バーンズ、ジョージ・ノルフィ
製作:フランク・マーシャル、パトリック・クローリー、ポール・サンドバーグ
原作:ロバート・ラドラム
撮影:オリバー・ウッド
音楽:ジョン・パウエル
出演:マット・デイモン、ジュリア・スタイルズ、デビッド・ストラザーン、スコット・グレン、
2007年アメリカ映画

2007/11/18

二宮 ざる菊園



地域の情報紙に毎年紹介記事が載る二宮のざる菊。今年も見事な咲きっぷりだというので、秋晴れの日曜日、散歩がてら出かけることにした。
歩いて大磯駅。東海道線一駅乗って二宮下車。駅北側の吾妻山山頂まで20分。傾斜がきつい。体力の衰えを実感する。山頂からの絶景は何年振りだろう。風が強い。海には白波が立っている。岸からそう遠くないところをクレーンを積んだ船が白波をけたてて進んでいる。健気な様子。心なしか、船が前傾姿勢で風をしのいでいるように見えた。
お昼時でお弁当をつかっている家族ずれが多い。おにぎりを用意すればよかったと悔やみながら下山。
1号線に出て魚を食わせるお店に入る。アジのたたきを頼んだ。あら汁もともにうまかった。
その後、お目当ての農家に向かう。道に迷って裏側から進入したざる菊園。お椀にさいた菊がズラーっと並んで、壮観というか丹精こめた仕事の精花。いや見事なものでした。

1 ざる菊整列
2 ざる菊格子

2007/11/11

摂州合邦辻


先月は歌舞伎座の昼夜と国立劇場を観た。どちらも楽しかった。とりわけ歌舞伎座夜の部「牡丹灯籠」と「奴道成寺」、国立劇場の「うぐいす塚」が印象に残っている。
昨日は『吉例顔見世大歌舞伎』昼の部を見に歌舞伎座へ。
吉右衛門は好きだが幸四郎というのは世にいわれるほどの名優なのだろうか。先月国立で見た俊寛も今ひとつピンとこなかった。片岡仁左衛門のまことにもって素晴らしい男っぷりにはほれぼれしてしまう。
車中のお供にディーバーの新作を持っていったのだが、幕間に斜め前の人がパラパラめくっている本が同じものだった。
今日は国立劇場へ人間国宝坂田藤十郎の『摂州合邦辻』を見に行く。地下鉄に乗り換えようと新橋で下車したら本降りの雨。国立劇場までの距離を考えれば傘は必要だ。道の向こうのドラッグストア即調達し地下鉄で移動。現地に着いたら雨など気配もない。そのまま大事に持ち歩いて、結局帰りの電車に置き忘れたorz。
で、坂田藤十郎は凄かった。先月の歌舞伎座でも大した風格だったが、『摂州合邦辻』の激しく生々しい情念の表出には年齢を感じさせないエネルギーと色気が漲っていて、人間、歳取ったら枯れるなんてことは嘘だと思わせるほどに脂がのりきっているようだった。大詰めで明らかにされる事の真相に、世界の様相をガラリと変化させるどんでん返しのダイナミズムとカタルシス。
前日の美味いところだけを手際よく振る舞われたような、顔見せの楽しさは楽しさとして、じっくり語る通し狂言の歯ごたえと人間国宝の旨味を、今日はたっぷり堪能させられた。

クローズzero

いやぁこれは掛け値なしに面白い。今年の邦画を代表する1本だ。
小栗 旬が抜群のルックスで輝くばかり。ヤバいくらいかっこ良い。
対する山田孝之も虚無的な表情が味わい深く、こっちも結構カッコいい。
この二人が頂点に立つべく、周囲のワルを巻き込んで激突する。相川翔と竹内力のDOA以来の、久々に三池崇史らしいユーモアとダイナミズムの炸裂とで描かれハードなバイオレンス。周囲のワルたちも魅力的な味付けで、しっかり描き分けられている。痛快極まりない面白さのうちに、クライマックスに向けての緊張がきっちり盛り上がっていく。役者はみんなかっこ良く、カタルシスは充分。後味も大変良い。

ワルとやくざと警官しかいないという世界観は、バイオレンス・ファンタジーの傑作「ストリート・オブ・ファイア」を彷彿とさせるが、面白さでは決して負けていないし、主演者の魅力ではむしろ勝っている。TVで観たときは普通のイケメンにしか見えなかったが、小栗 旬、逸材だ。

監督 三池 崇史
出演 小栗 旬 やべきょうすけ 黒木 メイサ 山田 孝之 遠藤憲一

11.02

10月に見た映画

「パーフェクト・ストレンジャー」 
ここまで人間を貶めて描くか。そんな映画作りが楽しかったのか?。お下劣で救いがたい。

「題名のない子守唄」
意味ありげな描写は見せかけだけ。主演女優の魅力で見せるハッタリ監督。

「エヴァンゲリオン 序」
いたいけな少年が衆人環視のもとオナニーを強要させられるのだった。という、まことにかわいそうだけど実はエロな話なのだった。平日の夕方、客席は大人の男ばかり。

「キングダム」
メインタイトルからエンディングまで、緩急自在に展開するドラマ&アクション。文句なし、パーフェクト!

「グッドシェパード」       
近頃稀なル・カレ風本格エスピオナージュ。これにホームドラマ要素が添加されて「ゴッドファーザー」的な面白さも。デ・ニーロは変な映画ばかりに出て、栄光に陰りが見えているように思えたが、全然そんなことなかったのだ。素晴らしい監督作。

「スターダスト」        
ピーター・オトゥール、ミシェル・ファイファー、ロバート・デ・ニーロを使って、よくもまあこんなにできたもんだと感心するほどにつまらんかった。

touch

今日、国立劇場の帰り、銀座のAppleストアに寄った。
6日に覗いた時は売り切れだったから、今日もないだろうと思ってたら、
あった。反射的に16Gを買った。
買ったはいいが、Mac OS 10.4.0以上でないとコントロールできないのだった。
自分のは10.3.9なのです。

本日購入
1. ipod touch
2. mujiチョロQ・バス
3. トミカ ピカチューカー

10.21

10万キロ


愛車ヴィヴィオGXーTの距離計が10万キロに達した。
おめでとう。
ネットで見つけたGXーT。
新潟の中古車ディーラーまで引き取りに行った。
帰路、観光バスを追い越すべく高速走行中、急にエンジン回らなくなり、
雪の関越道で死ぬ思いをさせられた。
不調のまま赤城山ではついに立ち往生。
はらわた煮えくり返る思いでディーラーに電話し引き取らせた。
仕切り直しの納車が平成14年3月、メーターは7万5千キロ。
以来今日まで快調に走り続けている。

GXーTは、スバルが93年に3000台限定で出したT-top(軽で4人乗りのオープンカー)という冗談のような車に、スーパーチャージャー付きのエンジンを乗せ変えるなど手を加え、翌94年に3000台限定発売したという希少性ある車だが、稀少が価値に結びつかなかったのが一番の特徴だ。
ホンダのビートやスズキのカプチーノに勝るとも劣らないユニークな魅力も、まるで一般受けしなかったわけで、このまま人知れず日本自動車史の中に埋もれて行くことだろう。
良さが理解されにくいGXーTだが、最近のブサイクなデザインの車ばっかりの中、私にはこのキュートなGXーTが、よりに一層魅力的に輝いて見える。
どこから見てもそんな気がする。大好きなのだ。
10.20