2007/11/24

クワイエットルームにようこそ

神経内科の隔離病棟の中にあって、さらに隔離されたクワイエットルーム。
何故かその部屋で覚醒した内田有紀。どうしてなのか記憶にないが、どうやら睡眠薬の過剰摂取を自殺未遂と疑ぐとられたらしい。こんなことで仕事をしくじってはキャリアが台無し、退院させろと大騒ぎし却って状況を悪くした挙げ句、早期退院を勝ち取るにはここの生活を受け入れるしか無い、と思い定める。 

過食、拒食、自傷、虚言と様々な病棟の住人たちを演ずる女優たちが、それぞれ個性的な役柄を魅力的に演じている。中でも、表現力と存在感で惹きつける蒼井ゆうと、抜群の巧さと凄みで圧倒的な大竹しのぶの怪演から目が離せない。冷徹な看護婦、性別不明の医者、多彩な患者、怪しい人物オンパレードの中で唯一まともに見える内田有紀の清潔感。まともに見える内田有紀の、実はまともではない病理が明らかになる後半、いきなりクライマックスへ上り詰め、隔離病棟の空気を一気に革新する展開も鮮やか。

患者より挙動が怪しい宮藤官九郎のダメ男のキャラ造形にも説得力がある。皮肉さと優しさ。皮肉というのとは違うのだが、慈愛というか、懐の深い面白がり方というか、きちんと優しい雰囲気に満ちている。どちらかと言えば、つかみどころが無い松尾スズキにしては珍しく、つかみどころのはっきりした作品。明るく元気に生きていこう。って気にさせてくれる。